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2019.3.27(水) |
独禁法審査に例外規定導入検討(大前 研一) |
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独禁法再検討の本質的環境変化とは
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日経新聞が3月5日報じたところによりますと、政府が独占禁止法の例外規定を盛り込む新法を検討していることが明らかになりました。人口の減少により地方の銀行やバス事業者は経営基盤が年々弱まり、統合による効率化が避けられない現状ですが、独禁法の観点から公正取引委員会が待ったをかけるケースが見られることから、政府は統合を認めやすくすることで、地域社会を支える金融、交通サービスが失われるのを防ぐ考えです。
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独禁法というのは、そもそもアメリカで、主として銀行などのサービスとメーカーが寡占をし、その上で値段を上げ、不当な利益を取るという、価格が問題となってできた法律なのです。
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ところが、今起こっている現象には2つあり、1つは、国内では非常に大きなシェアであるものの、海外から比べてみたらどうということはない場合です。海外の人と直接マーケットで競う世の中です。日本の公取は国内を見て、二つを足すとどうしようもないとノーと言うわけですが、そういう会社は海外に出たら手も足も出ない状態なのです。
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つまり、グローバルのシェアというものをここに反映しないといけないのです。ようやく最近になって、新日鉄住金の合併あたりから、やはりアルセロール・ミタルのような巨大な企業と競うには、日本の中でトップ級が一緒になっても良いと判断するケースが初めて出たわけです。
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しかしそれは公取にお願いをして、十分な説明をして、なんとかしないといけないということで、ルールとしてはダメということになっているのです。
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そしてもう一つの現象として重要なのが、独占的な企業であるGAFAの存在です。グーグル、アップル、アマゾンといった企業が市場を独占しています。ところがこれらの企業は、独占にあぐらをかいて値段を上げてはおらず、むしろ下げているのです。
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例えば、アマゾンなどは、アメリカでは本の値段をもっと下げています。むしろ独占をして値段を下げて、情報を集め、その情報を他に売って稼いでいるという仕組みなのです。ですので、従来のように寡占によって値段を上げ、コンシューマーから不当な利益を取るというような、独禁法ができたそもそもの理由となった状況とは完全に違ってきているのです。むしろ独占をして値段を下げて、他の人が太刀打ちできなくするということなのです。本屋などが実際にその例です。そういうことに対して独禁法や、日本の公取は追いついていけていないわけです。アメリカも同様に追いついていけていません。
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このように、21世紀型の経済とグローバル経済、この2つの要素に対して、独禁法をどうするのかということを考えなければいけないのです。そして、遅ればせながら日本の政府は少しそれを考えた結果、行き着いた先がうんと小さなところだったというのが、この話なのです。
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独禁法と国内地方銀行・交通インフラ
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第二地銀は数が減少し、どんどんと成り立たなくなっています。こうしたところでは地方における一つの銀行の貸出シェアが高くても、独禁法は適用しないようにしようというのが今回の案です。
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しかし、銀行全部を足しても潰れるかもしれないという時代なので、この議論そのものが、銀行に好きなことをしなさいというほどのルールの変更をしないと、成り立たないかもしれません。
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地方銀行の業績推移を見ると利益が減少傾向なことがよくわかります。アベノミクスで金利がゼロになり、利益も取りようがないわけです。
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また、乗合バスの事業者数を見ると、事業者の定義が変更されたこともあり、事業者数はどんどんと増えていますが、基本的には乗ってくれる人はどんどん少なくなっていってしまいます。
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この場合にはむしろ集約をして、この地方ではこの会社だけがバスを全部やっているという形にするわけです。バス会社がもし値段を上げようとしても、そのときには他のもの、例えば今の時代、誰かが出てきて軽自動車で運ぶようなものが出てくれば事業が成り立たなくなってしまうのです。
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私に言わせれば、少し遅いのではないかと思います。そんなことにいちいち国が絡まないで、その地方の議会でどうすれば良いか決めさせれば良いのではないでしょうか。それを国がようやくやったということが記事になるところが、日本らしいところだと思います。
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【前回の記事】最近の商品価格について(近藤 雅世)
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