グローバル・マネー・ジャーナル

2023.11.17(金)

最近の金価格の動きの背景(近藤雅世)




2022.12.14(水)
最近の金価格の動きの背景(近藤雅世)
最近の金価格の動きの背景(近藤雅世)

8~11月の振り返り

最初に、約3カ月前、8月1日の講座で、金価格の予測についてお話ししましたので、そのときの結論を再度確認します。

一つ目は、インドの存在が大きくなってきたことを実感したことです。日本は中国との関係は深くて長いですが、それに比べて、私だけかもしれませんがインドについての知識は少なく、インドの歴史や文化、インドの近代経済の流れをもっと学ぶ必要があると感じました。インド経済に関する著述は少なく、現政権に至る戦後のインド政治の動きや文化的背景、インド経済の弱点、問題点を知る必要があるように思いました。

二つ目は、直近の金価格に関しては、米国をはじめとする世界の中央銀行がインフレ対策として利上げを始め、米国ではそろそろ金利の天井感が出てきたということです。利上げや不動産需要や企業業績、個人消費などに悪影響を与え、景気を悪化させる要因となりますが、経済の影響はどれほどになるかは、常に見極める必要があると思いました。

三つ目は今後の金価格について、11月までには利上げの流れは利下げの方向に転換すると考えました。利下げや金融緩和は金にとってはフィーバーとなり、ドル安などの通貨安は、その通貨建ての金額を強含みとなると予想しました。しかし、ここ数カ月は金価格に天井感があり、当面は上値を固める動きで終始するのではないか、11月まではドル建ての金価格が1,800から1,900ドルと予想するとお話ししました。予想が外れた部分は、まだ利上げが続いて天井感がありますが、もう1回利上げがあるかもしれないというところと、金の価格はもう少し上がって2,000ドル近くまで上がっているということです。

日本・アメリカの金価格について


日本の金価格については、2023年の1月4日の7,760円からずっと上がって、11月6日は9,603円となりました。アメリカの金価格も上がっていますが、それに加えて150円近くまで円安となり、それが影響して商品価格が日本円建てでは軒並み上がっています。

次にニューヨークの金価格について、今年の1月3日は1846ドルでしたが、5月4日に2085ドル、7月27日に2022ドル、10月27日に2019ドルと、2000ドルを3回超えました。直近では、11月2日(金)は1993.5ドルでした。年初から147.4ドルと8%上昇しており、8月1日からは14.7ドル、0.8%の上昇になっていますが、8月1日も高かったので、10月6日には1823ドルまで下がって、そこから上がってきました。

最近の金価格の動きの背景


最近の金価格の動きについての背景をお話ししますと、まず8月には予測できなかった、10月7日のハマスによるイスラエル侵攻が挙げられます。そして200人の人質を取り返すため、現在もイスラエルはガザ地区に空爆を行い、地上部隊も少しずつ入れ込んでいます。ウクライナの情勢がかすむほど、イスラエルとハマスの問題が連日、取り上げられています。これにより、イスラエルとサウジアラビア等が国交回復を進めようとしていたことが中断され、またイランがハマスに同調して参戦するといううわさも一時的に流れたことから、中東全体の問題として金価格が急騰しました。原油価格についても同様のことが起こっています。

次に米国の追加利上げについて、直近の11月1日までのFOMCでは2回、連続で金利が5.25から5.5%に据え置かれました。これについては、皆さんもよくご存じだと思いますが、私なりに解説しますと、企業業績が落ち込んで不況ムードになればFRBは利上げをやめ、利下げ・金融緩和に転じるだろうと思われます。しかし2%というインフレターゲットを持っているFOMCがきっちりと2%を確保する、2%に落ちるようなインフレ率になるかどうかがポイントで、取りあえずはもう1回、利上げするかもしれないとパウエル議長は言っています。

そして中国では不動産バブルが崩壊し、二つの大手不動産業者はほぼ倒産に近い状態です。これまで不動産バブルで大もうけをしてきた人々が、価格低下によりどうなっているかですが、私の知人も日本に50億ほどを持ち込んで多くの不動産を買っていました。日本でも1億円近いマンションが出てきましたので、投資としてはよかったかもしれませんが、中国ではどの不動産も下がっているため、中国での損失を日本でカバーできたかどうかは分かりません。

最後に、10月の米国雇用統計によると雇用者数は15万人増で、市場予想の18万人増を少し下回りました。予想外だったのは3.8%だった失業率が3.9%へと、0.1%上昇したことです。これは全米自動車労働組合によるストライキの影響で、一時的なことかもしれません。いずれしても思ったほどの景気回復の見込みが見られず、逆に金利の利上げはこれからじわじわと効いてくるかもしれないというのが、現在のスタンスです。


—この記事は金融リアルタイムライブで放映されたの内容を一部抜粋し編集しています
株式・資産形成実践講座事務局
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