グローバル・マネー・ジャーナル

2023.11.24(金)

貿易収支とドル/円相場(唐鎌大輔)




2022.12.14(水)
貿易収支とドル/円相場(唐鎌大輔)
貿易収支とドル/円相場(唐鎌大輔)

需給は2012~2013年が転換点だった

この10年間、日本は円高を経験していません。10年前から金融緩和、アベノミクスが始まった影響はありましたが、それだけではなく、円安が進み始めた頃には貿易黒字もなくなりました。2011年、2012年には傾向的に黒字が消滅し、それ以後は、一時的に戻ることはあっても、ほとんどは戻っておりません。

昨年の貿易赤字20兆円は史上最大でしたが、2014年は12.8兆円、2013年は11.5兆円と、いずれも円の対ドルの変化率は10%以上、下落していました。2013年の20%は、2012年が70円台でしたから少し異常なところはありますが、やはり暦年で貿易赤字が10兆円を超えるような年というのは、それ相応に円が下落するのではないかと思います。今年も9月まででは7.9兆円、10月までで約8.6兆円の赤字で、史上4番目の貿易赤字である2012年の6.9兆円より大きくなっています。ちなみに2012年も、円は12.8%の下落をしていました。今年は多くの人にとって想定外の円安だったという総括で、世論は終わろうとしていると思いますが、私は起こるべくして起きたと感じます。

また、来年のアメリカは利下げがテーマになると思います。昨年の今頃も皆、同じことを言っていました。「来年こそ利下げの年になる」と言われている中で日本にとっては何が大事かというと、貿易赤字国として迎えるアメリカの利下げについて、あまり経験がないという点です。2019年7月に利下げが始まりましたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)では、10年ぶりの利下げだと大変な話題になりました。

あの頃の日本は2018年も2019年も兆円単位の貿易赤字国だったので、その時の為替の反応は大変参考になると思います。2019年7月にアメリカが利下げをし、翌月の8月のドル円相場はどうなったかというと、8月の1カ月間は108円ぐらいだったものが、106円台まで円高になりました。そしてその後、9月から12月の4カ月間は円安になり、結局110円前後で越年しました。残念なことに、4カ月しかサンプルがありません。その理由は、次の年からコロナ禍によるパンデミックになり、そこから先の数字は、あまり参考にならないためです。

しかしコロナの期間に一気にゼロ金利までFRBが持っていって大変な円高になったという記憶は皆さんの中にはないと思います。それはとても大事な経験則によるものです。リーマン・ショックぐらいまではアメリカが金融を緩和する、金利を下げるといったときに金利差が縮小して投機的な円売りやドル買いがなくなれば、日本の実需の大きな貿易黒字が残るので円高が起きていたというのが、時代の流れでした。

けれども、今は金利差の部分で投機の円買い、円売りがなくなっても、実需は円売りです。そのため、そんなにも円高にはならないというのが私の意見です。来年を見通す上では、円高にはなりますが、150円台だったものが130円台になることを日本として喜べますか?逆にそこまで落ちたのでは?というのが、この2年の学び、変化だと思います。

「強い円」と家計部門の関係 ~家計はいつまでもおとなしいか?~

『日本経済新聞』は、「三井住友銀行、ドル定期預金の金利利上げ 年0.01→5.3%に」と、かなり大きく報じていました。もともとネット銀行の中には5%、6%の外貨預金がありましたが、三井住友銀行のような伝統的な銀行で高利回りの外貨預金が出たのは、大きなニュースです。

資金循環統計においては総資産のうちの97%が円であり、そのうちの53%が金利も付かない普通の現預金で、これらのほとんどが高齢者の資産です。高齢者はテレビや伝統的なメガバンクからの情報発信に影響を受けやすく、三井住友銀行のニュースが大々的に報じられ、その後も続けて『日本経済新聞』が高利回りの外貨預金の記事を出していることから、高齢者の資産が動くきっかけになるかもしれないと、個人的には大変注目しています。

現預金は今、1,100兆円ありますが、10%でも動けば10兆円、5%動くだけでも50兆の円売りです。新NISAや新iDeCoは2024年スタートのため、まだ始まっていませんので、資産運用を始める人は、大体外貨(アメリカの株・アメリカ株のインデックス)から始めると思います。それが良いか悪いかは個人でご判断いただきたいのですが、為替リスクはヘッジせず、円安になれば儲かるような商品を買う人が多いと思います。来年は貯蓄から投資元年になるので、それに伴って円から外貨元年にならなければよいが…というのが、為替のマーケット見ている人間としての心配です。

実際に、既にかなりの投資家は投資信託経由で国内株を売って外国株を買っていますので、これも円売りの一因だったとは思います。逆に外貨預金は1%未満の、資産運用の中ではまだマイナーな部類です。外貨預金にとって為替リスク以外は普通の預金ですので、1年間持ち続けるだけで5%や6%の利息をもらえるのであれば、そのまま持ち続ける人が居てもおかしくはありません。そして日本の金融資産構成はそもそも保守的過ぎるところがありますので動きを見せる余地は十分あるでしょうし、ヨーロッパ並みの動きがあってもおかしくないでしょう。株式については現在10%程度しかありませんから、20%になってもおかしくはないと思っています。

—この記事は2023年11月16日に金融リアルタイムライブで放映されたの内容を一部抜粋し編集しています
株式・資産形成実践講座事務局
 「老後2,000万円問題」がメディアで取り上げられるなど、超高齢化に向かう社会を生きる日本人において、資産形成は今後益々重要な意味を持つようになります。日本では欧米と異なり、金融・資産に関する教育が学校教育に組み込まれていないため、まずは基礎的な事実や状況を把握することが必要です。
 今般新たに開講する「資産形成実践コース(月額プラン)」は、当講座開講15年の集大成として開発されました。受講者の思考体系から鍛え上げ、アウトプット重視で頭と手を動かしながら資産形成における【マインド】と【スキル】の両面を習得し、【実践】に移せる力を身に付けて頂くことを狙いとしています。
▼【月額6,600円~】投資家向けマーケット情報・サブスクリプション講座詳細はこちら!
株式・資産形成実践講座では、Facebookページでも金融にまつわる最新ニュースなどご紹介しております。ぜひこちらもチェックしてください。
▼ 【株式・資産形成実践講座】公式Facebookページはこちら
それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
※本メールはHTML形式で配信しております。インターネットに接続した状態でご覧ください。

[発行人 : ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ

株式・資産形成実践講座事務局]

〒102-0084 東京都千代田区二番町3番地 麹町スクエア

▼ 【株式・資産形成実践講座】お問合せはこちら
▼【株式会社ビジネス・ブレークスルー】個人情報保護方針に関して
▼配信停止申請はこちら