グローバル・マネー・ジャーナル

2023.12.1(金)

日本のGDP失速要因と各国との比較(岡村聡・岡村さとみ)




2022.12.14(水)
日本のGDP失速要因と各国との比較(岡村聡・岡村さとみ)
日本のGDP失速要因と各国との比較(岡村聡・岡村さとみ)

日本のGDP失速要因は個人消費と企業の海外投資

7月~9月期、第3四半期のGDP統計が発表されました。マイナス2.1%という非常に厳しい内容で、一番足を引っ張ったのは個人消費です。GDP全体ではコロナ前のピークを上回りましたが、個人消費については10年前の数値に届いていません。個人消費の低迷にはデフレが影響しており、実際にデフレのために消費をなるべく先延ばししようというマインドが定着しています。インフレによってポジティブに変わると思っていましたが、節約志向は続き、個人消費は低迷しています。加えて、企業の設備投資も伸びていません。日本企業の多くは、大きな投資を国内ではなく海外で行っています。様々な側面はありますが、日本に大きな工場やサービスセンターを作ったとしても、今は少子高齢化による人手不足で人が集まらない状況であるため、また海外は経済的にも大きくなっていることもあり、海外投資の方向へと進んでいます。個人消費はインフレになっても伸びず、また企業の設備投資も伸びないことから、予想以上のマイナスになりました。

経済成長は東南アジアが健闘

2024年のGDP実質成長率予測は、残念ながら先進主要国は2%以下という厳しい状況で、その中でも日本は0.7%という一番低い経済成長率が予想されています。逆にフィリピンやベトナム、マレーシアが健闘しており、インド、インドネシアなど東南アジアの主要国は軒並み強いといった見立てがされています。中国も不動産バブル崩壊などがありながら、昔に比べると落ちてはいるものの4~5%の経済成長率を維持すると予測されています。

日本の経済地盤沈下が深刻な状況へ

私たちの時代では、長らく日本が世界第2位の経済大国だと学校で教わってきました。しかし15年ほど前に中国に逆転され、日本は3位となりました。今年は予想以上の円安もあり、ほぼ50年ぶりにドイツに抜かれることは間違いありません。1970年代以来、西ドイツは世界第2位で、アメリカに次ぐ経済大国でしたが、高度経済成長を遂げた日本が2位となりました。しかしその後は日本だけが95年をピークにして低迷、さらに直近の円安によって減少傾向となり、対して他国は伸びを見せました。そして今のトレンドでは、来年、もしくは遅くとも再来年には毎年6~7%の伸びを見せるインドにも抜かれて日本は5位となり、5年後あたりでイギリスにも逆転される恐れがあります。

次に1人当たりGDPの話になりますが、人口が全然違います。少子高齢化で減ってはいるものの日本の人口は1億2000万以上ですが、ドイツは8000万、イギリスは6000万と、ほぼ日本の半分です。しかし1人当たりGDPではかなりの差があり、経済規模でも逆転しています。さらにブラジルやメキシコ、インドネシアについては着々と数字を伸ばし、そしてブラジルはコモディティバブルが崩壊して通貨が弱くはなったものの、人口は圧倒的に増加しています。インドに続く、いわゆる主要新興国は、続々とGDPを伸ばしているのです。

実は5年前ぐらいまでは、2040年までは日本が3位を維持するといった楽観的な経済予測がなされていました。しかし15年以上手前でドイツに逆転され、直近の円安などのトレンドも含めると2040年には10位ぐらいまで順位を下げるという悲観的な見方も出ています。

しかし日本が経済的に復活しようとしても、工業の原材料で買い負けてしまうというのが厳しい現実です。EVシフトなどと言われていますが、結局、半導体にしても自動車にしても工業製品については希少な金属、電池であればリチウムやコバルトといったさまざまな原材料が必要で、こちらについても買い負けしています。そしてエネルギーに関しても深刻です。特に今、戦争など深刻なイベントがありますが、経済を回すために必須エネルギーである天然ガスや原油などを日本は有利な条件で調達できていません。

そして、何より深刻であるのは食材です。最近よく言われるのは、魚介類や肉類、穀物やフルーツなどあらゆる食べ物について、最も高級でおいしい部分はシンガポールやドバイ、アメリカなど海外に輸出され、日本では買うことができません。さらに嗜好品以外の日常的な食材についても、この状況が広がっていくように思います。経済規模が落ちるとあらゆるネガティブな側面が出てきますが、今のトレンドが続けば、それが現実の問題となりつつあると言えます。

日本経済の一人負けは円安でさらに加速

確かに少子高齢化も要因ではありますが、それ以上に1人当たりのGDPは日本だけが大きく下がっています。最もインパクトが大きいのは、2022年時点での、2024年に韓国と台湾が日本とほぼ同じ、場合によっては逆転するという予測です。このままではGDPでドイツに逆転され、1人当たりGDPでも、恐らく今年、韓国、台湾に逆転されることでしょう。長らく日本はアジアの中でもトップクラスでしたが、東アジアの国々にすら徐々に抜かれ始めています。

シンガポールは少し特殊な国で、1人当たりGDPは600万です。よく日本との差を聞かれますが、少し前までは日本のGDPは3万ドルから4万ドルで、シンガポールは6万ドルから7万ドルと、倍の開きがありました。しかし今、日本は3万ドルですが、シンガポールは来年には9万ドルを超えると言われています。所得については、シンガポールは日本の3倍、アメリカは倍以上、オーストラリアやドイツ、イギリスなども倍ぐらいになるようです。もしかすると5年後、10年後には日本はイギリスに経済規模でも逆転され、アジアの中においても1人当たりGDPで抜かれつつあるという状況が迫っていると言えます。

—この記事は2023年11月18日に金融リアルタイムライブで放映されたの内容を一部抜粋し編集しています
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