グローバル・マネー・ジャーナル

2019.1.9(水)

国内株式動向(大前研一)

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国内株式動向(大前研一)

国内株式動向

 2019年最初の取引となった1月4日の東京株式市場で、日経平均株価は大幅に続落し、1万9561円で取引を終えました。3日のアメリカ市場の急落や、外国為替市場での円高ドル安進行を嫌気した売りが膨らんだものですが、翌4日のアメリカ市場は、FRBパウエル議長の、金融引き締めを急がないとの発言が好感され、大幅高となりました。
 ここで一番大きな問題は、トランプ大統領の言うことがワイルドに市場に影響するようになっていることです。また、パウエル議長とトランプ大統領の仲が悪く、喧嘩をしてしまっていることも問題です。今回の急落については、トランプ大統領がこれをパウエル議長のせいにしており、一方、パウエル議長はテレビインタビューで、トランプに辞任を迫られたらどうするかと聞かれ、絶対に辞めない、辞めさせる権限は彼にはないと明言しています。
 ただ、パウエル議長は、ここまでマーケットが乱高下する状況はさすがにまずいと思ったようで、利上げについて、今年は2回行うとしていましたが、それを封印すると言いました。パウエル議長といえども、マーケットの安定を優先するというわけで、これでとりあえず市場は安心となりました。それでも大統領がFRBの議長をあれだけ叩きまくるというのは、やはり異常な状況です。パウエル議長はそれに対して怯えているわけではありませんが、マーケットがこのように振れるのは自分の責任で、これをなんとかしなければいけないという思いがあるので、利上げは封印したと言っているのでしょう。
 一方、アメリカ株を下げているアップルの不振も、原因はトランプ大統領です。アップルそのものが80兆円という時価があるので、少しの動きで市場に対する影響は大きく、一日の下げ幅の中で8兆円もの影響があったと言われています。そうした意味でトランプ大統領はアップルをいじめるのを止めるべきなのです。
 アメリカで生産をしろなどと言っていますが、気が狂っているような発言です。アメリカで生産をするなどということはできるわけがなく、仮に表面的にアメリカで生産したとしても、部品は全て外から持ってこなくてはいけないのです。さらに言えば、どうやって労働者をあつめるのでしょうか。アメリカでは今、1000人の工場労働者を雇おうとしてもとても集められません。日本でも同様で、1000人の工場を東北地方で開こうと思っても人が集まりません。こうしたトランプ大統領の非常識さ、背景も何も分からずにアップルを呼び付けてアメリカで生産しろと言うなどとは、スタンドプレイもいいところなのです。この人の頭の弱さ、いわゆる業界の知識のなさというものは、世界の金融市場から見ると、不安定さの最大の要因と言えるでしょう。もう少しトランプ大統領そのものを無視するということをマーケットが学ばないと、そのためにいつまでも乱高下することになってしまうのです。
 去年1年間の日経平均の推移を見ると、このところの落ち気味な状況が分かります。国内の株式保有比率では、外国人の比率が高くなっているので、ショートとして売り抜ける展開になったときには、株価は大変なことになるでしょう。それ以外は金融機関が多く保有しており、個人はかなり売り抜けているという状況です。株式売買状況では、海外部隊がこのところ売り込んできているということがわかります。

新興国通貨の騰落動向

 米ドルに対する主な新興国通貨の騰落率を見ると、日本円だけが高くなっています。
 メキシコ、マレーシアあたりは大丈夫ですが、中国、インド、南アフリカ、ブラジル、ロシア、つまりBRICSが軒並み揃って下げていることがよくわかります。それ以外では、トルコが独自の制裁を受けていることで通貨が下落し、アルゼンチンは自分の裃につまずいて、ひっくり返っているというような状況です。
 いわゆる15年ほど前にもてはやされたBRICS、年に1度は会議も続けていますが、この国々がやられているということなのです。結局新興国から成熟国になりきれていないということが、対ドルに対して通貨が売られるということにつながっているのです。
 ただ、日本円が高くなるということに関して理由は全くありません。日本は安全通貨だと言われていますが、自分のところのGDPに対して250%も将来から借金をしているようなところがなぜ安全なのでしょうか。これは簡単に言うと、日本人が安心して買っているからです。身近な人が買っているからということです。ところが日本人で実際に買っている人はほとんどおらず、金融機関や日銀といったところが買っているわけです。外から見ていると、一番近くにいる日本人がたくさん買っているので安心だと思っているわけですが、これほど錯覚しているものはなく、タコが自分の足を食べている状況であり、太ったタコだと思われているのです。

アップルの株価推移米国アップルの株価推移

 米アップルは2日、2018年10-12月期の売上高が、当初の予想に比べ5%から10%低い、840億ドル(約9兆1600億円)になる見通しを示しました。中国でiPhoneの販売が低迷したほか、他の先進国でも新しい機種への買い替えが予想に達しなかったということで、売上高は2016年7-9月期以来、9四半期ぶりに前年同期を下回ることになります。
 トランプ大統領がアメリカで生産してほしいなどと、まるで吉本系のお笑いのようなことを言っています。アメリカで生産などできるわけは無いのです。アメリカで生産すればどのくらいコスト高になると思っているのでしょうか。こうしたことをきちんと説明しなければいけないわけですが、トランプ大統領には理解ができないのです。
 また、価格が高くなりすぎたということもあると思います。iPhoneは1からXまで、9はなかったようですが、モデルチェンジをしてきました。その都度少しずつ良くなってはいますが、画期的でこれは絶対買わなければという変化にはならなくなっているのです。新しい魅力を作り出すことはかなり大変になってきているのです。今は私も1世代前のApple製品を使っていますが、これ以上欲しいと思うものはほとんどなく、まだ充分使いきれていないという印象もあります。次のものを高いお金を出して買おうとは思っていません。
 またやはりアメリカにいじめられているということもあって、iPhoneを中国で買うと、価格の差がある時代になってしまったのです。中国での売り上げが減って、アップルが売り上げ見通しをさらに下げたという流れなのです。これもトランプ大統領から始まったことです。
 トランプ大統領の影響を受けてAppleの株価は下落してきました。アメリカで作れと言われたら、iPhoneは1万ドル位のものになることでしょう。そうしたことも含めて、そもそも人のいないアメリカで、今失業率は4%を切る中で、やっていくことなどはほとんど不可能です。ただ1つ良いアイディアがあります。メキシコとの国境を取り払い、メキシコから大量に人が来るようにすれば、それは可能となるでしょう。トランプ大統領はどちらを取るのかはっきりしなければいけません。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
1月6日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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▼その他の記事を読む:
【前回の記事】国内景気の真実と2030年の現実(大前研一)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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