グローバル・マネー・ジャーナル

2018.5.23(水)

米株価暴落の前兆とは何か?(田口美一)

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米株価暴落の前兆とは何か?(田口美一)

アメリカの株価動向とポイント

 2018年に入って5ヶ月経ちますが、この5ヶ月で金融市場にはかなりショッキングな大激震が起こったと感じています。まず、リーマン危機の後ずっと好調だったNYダウが、久しぶりに大きな変動を見せました。特に2月初めには一日で1175.21ドルの大暴落をしました。1175ドル自体は4.6%のマイナスで、皆さんも下がったとは言ってもたいした規模の暴落ではないと感じたかもしれません。
 しかし、2月から始まった下げを3月の安値のところまで入れると、10%も下がっているのです。2月5日の一日で下がった1175ドルも、幅で見ると、過去最大の下げだったのです。長いチャートで見ると、第二次大戦前、1920年あたりは今から見るとほとんどゼロに見えるほど水準が変わっています。ゼロに近いところがずっと続き、1980年頃、40年前あたりから急に上がってきているので、水準の感覚が分からなくなってしまいます。1万ドルの時に1175ドル下げたとすれば大変驚きますが、2万ドルを超えている状況では、1175ドルの下げはそれほどのことではないと感じてしまいます。しかしこの下げは、株式市場の大きな激震だと認識しています。
 今回の下げの影響が他のマーケットにも影響しました。日本、ドイツ、中国の3つの市場を見ると、先ほどアメリカは10%下がったと言いましたが、日本は15%ほど下がっているのです。ドイツDAXは13%、中国上海総合指数も14%下がっています。ところが、日本とドイツは調整した後に9%ほど戻っていて、トータルでは高値から5%下げたあたりまで戻っていることになります。しかし中国は下がりっぱなしです。イニシャルインパクトとしてはそれぞれ同じようにあり、日本は一番大きく下がっています。
 昔から、アメリカが咳をすると日本は風邪をひくとよく言われましたが、まさに今回は日本が最も下げが大きくなっています。日本の株式市場の過去のパターンを見ると、日本の市場独自の材料で下げる事はあまりなく、海外の材料でよく下がります。考えてみれば日本は基本的には輸出で食べている、ものづくりの国だったこともあり、海外で問題が起きると、それに対して自動車メーカーや機械メーカー、少し前なら鉄鋼メーカーなど、すべての輸出産業が影響を受けるので、それなりにマーケットにインパクトがあるのでしょう。このように今回も日本や各国にアメリカの暴落が影響を与えました。
 ではなぜアメリカは今回下がったのでしょうか。一般的な理由は3つあると言われます。まず、アメリカの大激震はアメリカの金利が上がったことによるというもの、2番目としてそもそもバフェット指数やPER等のバリエーションが上昇し、かなり割高になっていたのではないかということ、そして3番目は北朝鮮の問題や中東シリアの地政学リスクです。これら3つが影響して下がったのではないかと言われています。それぞれ検証していきますが結論を先に言うと、最も大きな原因となったのはアメリカの金利の上昇だと考えています。私は基本的には、「株価の下落には金利上昇あり」だと思っています。
 今回の金利の上昇がどの程度だったのか見てみます。10年の米国債金利を長いチャートで見ると、過去には16%になったこともあり、どこの国のいつの金利かと思ってしまいます。世界で最も大きい国アメリカの金利が、16%まで行ったことがあるのです。1970年代後半から80年にかけて、そこからトコトコと金利は下がっていき、足元ではなんと2%割れと、非常に低いところまで来ていました。しかし特に年明けから急に上がり始め、3%を超えるところまで来ています。そして5月には、3.1%程度まで上がっているのです。去年、一昨年あたりから私はよく言っていましたが、アメリカの金利は3%という水準が大きな壁になるのでなかなか超えないだろうと見ていました。実際に、2016年あたりには1.5%程度まで下がっていました。その後、一度2.5%まで上昇したことがありましたが、それでもまた2%近くに下がり、なかなか3%は大きな壁で、超えることは難しいだろうと言ってきました。
 それがいよいよ今回、3%を超えてきたのです。非常に超長期のヒストリカルデータを見ても、トリガーポイントを超えてきたように感じます。ただ問題なのは、ここからさらに4%、5%と進むのか、それともこのあたりをピークとしてもみ合い下がるのかということです。結論から言うと、とりあえず3%は超えましたが、このあたりで揉み合うことになると思います。3.5%、4%と急激に上がっていくと、絶好調のアメリカ経済も世界景気も、相当大きなダメージを、ボディーブローどころではなくがつんと、頭やお腹に何発もパンチを食らうほどのダメージがあるので、ここから急激に金利が上がる事はないだろうと予想しています。
 ただ、FEDがリーマンショックの後、大変な緩和をしていたところから、出口戦略を始めたのは2013年の12月からでした。なんと、そこからするとすでに4年から5年をかけて、しっかりと出口戦略を進めてきているわけです。最初は緩和の規模を減らしたり、国債の購入分を減らしたりして、実際にレートを引き上げたのは2015年の12月でした。0.25%から25ベーシスずつきっちりと、時間をかけながら上げて来ているのです。今現在2%近くにまでなっていて、今年の年末には2.125%まで行くと見られており、さらに2019年、今から1年半後には、3%近くまで行くのではないかと言われています。時間をかけながらではありますが、確実に引き上げをしてきていることもあって、10年国債金利は3%を超える水準まで来ているというわけです。
 2008年、いわゆるリーマンブラザーズがつぶれるほどの大ショックをアメリカを中心に受けたわけです。サブプライムローンの問題や、サブプライムの証券化商品が世界中で買われ、日本の金融機関なども買っていました。当初は日本の当局も日本政府も、大丈夫だと言っていましたが、やはり大丈夫ではなく、日本の金融機関も大きなダメージを受けました。ヨーロッパでも大ダメージを受け、ドイツやフランス、イギリスの金融機関がいくつも潰れる騒ぎとなりました。このような大騒ぎとなったのでFEDが非常に大規模な緩和を行い、それでどんどん状況が良くなってきたので出口戦略を続け、今日に至っているというわけです。いずれにしても、ほぼゼロ金利だったアメリカもしっかりと金利を上げてきているのです。
 大暴落の影に金利上昇ありということは、過去を検証してみてもわかります。過去のアメリカの株式の暴落と、日本の株式の暴落を一覧でまとめてみました。ブラックマンデーの時は下落率は30%、ITバブルの崩壊では45%、リーマンショックは5割の下落率となっています。日本の方も下がってはいますが、日本の場合は圧倒的にバブル崩壊での下落率が大きく、7割に上っています。しかもそこから30年近く経っていますが、まだそのピークまでの回復には至っていません。それぞれの暴落の回復までの時間を見ると、アメリカでは4年から6年、日本も今回を除けば3、4年で戻っています。
 レーガノミクス、ブラックマンデー、ITバブル、サブプライム危機、いわゆるリーマンショックの時の金利の状態は、それぞれどうだったでしょうか。レーガノミクスの当時、ボルカー氏がFEDの議長になり、いきなりFFレートを11%から20%に引き上げました。インフレ率は13%もあったのが、金利上昇によって3%から4%に引き下げられたという外科手術をしたのです。また失業率は6%から11%に上昇しましたが、その後また6%に戻ってきました。  
   次のブラックマンデーでは、一日の下げが500ドル、今では大した事はありませんが当時は22%の下げだったのです。その時は日本もイギリスも大きな下げとなりました。世界的な連鎖を引き起こしたのです。このときの背景についてもいろいろなことが言われましたが、やはり大きかったのは金利の上昇です。ブラックマンデーの下落が起きる前にひたすらアメリカの金利は上昇していました。1月に7%ほどだった10年金利は、暴落の頃には10%を超え、3%も上がっているのです。さすがにこれだけ上昇すると、アメリカの企業も景気も厳しくなってくるので、それを先取りする形で株価が大きく暴落したわけです。
 ITバブルでも同様です。この時はインターネット関連企業の銘柄が大変な勢いで上昇しました。従来とは全く違うニューエコノミーだともてはやされていたのです。しかしその後の利上げやニューヨークのテロもあり、一気にこのバブルが崩壊していくわけです。この当時もやはり金利は上昇していたのです。5.5%だった10年債金利は、7%近くまで上昇しています。
 そして、直近のリーマンショックでもダウは1万4000ドルから7000ドル近くまで大暴落を見せます。為替が大きく動き、ドル円は123円あたりから一気に100円を切る展開となりました。リーマン・ブラザーズは62兆円という途方もない負債を抱えて破綻しました。やはりこの時も、金利の上昇が背景にあります。4%前後から5.5%まで金利は上昇していました。その後2%近辺まで下がっていったことを見ても、金利上昇が暴落に効いていたのだと思います。
   このように、アメリカの株価暴落の際には必ずその前に金利の上昇があったのです。株式市場は金利の上昇に弱いということが非常に大きなポイントであり、今回も1.5%から3%まで金利が上がっているのです。緩和から出口政策を続けて金利が上がってきたということで、どちらかと言えばとても正しい政策を行っているわけですが、ここにきて順調だった株式市場も金利の上昇を気にせざるを得なくなっているという局面に入ってきていると思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「株式・資産形成実践コース」講師
田口 美一
5月17日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【前回の記事】選挙前後の相場の揺れに備える(藤本誠之)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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