グローバル・マネー・ジャーナル

2018.6.6(水)

イタリア情勢/日本の生産性(大前研一)

2018.06.06(水)
イタリア情勢/日本の生産性(大前研一)
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イタリア情勢/日本の生産性(大前研一)

【イタリア情勢】市場への影響

 イタリアのマッタレッラ大統領は先月31日、大学教授のジュゼッペ・コンテ氏を次期首相に任命しました。これによりコンテ氏を次期首相に推薦していたポピュリズム政党の五つ星運動と極右政党の同盟が、連立政権樹立で合意しました。
 今回のことで、マッタレッラ大統領はEU大好き人間だということがわかりました。首相に任命された人が外務大臣のような位置に反EUの人を任命するということで、それはだめだと拒否していました。イタリアの大統領がこうした役割をするのを見たのは初めてです。ほとんど象徴的な大統領と言われていますが、今回はかなり積極的な関与をしました。頭をコツンと殴られた感じで、コンテ氏にも効き目があったのではないかと思います。やはり反EUという所まで行ってしまうと、イタリアの国体がおかしくなりますし、もちろん経済もおかしくなってしまいます。
 フランス、ドイツなどに頭を叩かれまくることになれば、とてもやっていられないでしょう。国家財政も良くないので、そういう点で大統領の役割が改めて見直されたと思います。また、そうこうしている間に再選挙という話が出てきたので、これでは逆の意味で国がおかしくなってしまうということで、コンテ氏で良いとなったわけです。今回のパンチというのは、あまり頻繁に出してはいけないものですが、ある意味非常に効果のあった一発だったと思います。
 イタリアの首相は、象徴的な大統領の下、特色のある人がずっと続いてきました。レンツィ氏、モンティ氏、ベルルスコーニ氏、ロマーノ・ブローディ氏などです。ブローディ氏などは全くヨーロッパ主義の人で、EUの委員長をやっていたことなどもあります。彼の民主党はオリーブの木運動からできた政党です。一方、今度の同盟という政党は、ロンバルディ同盟というところが原点で、それほどEUからの離脱色が強いところではなかったのですが、やはり今は五つ星運動などに刺激され、かなり離脱側に傾いているようです。しかし原点に帰れば、そこまでではなかったのだろうと思います。
 イタリアの場合、もっと問題なのは北と南の仲が悪いということです。北で稼いで税金を納めたら南の方に持っていき、南に援助するということなので、その問題はまだあると思います。しかしEU離脱まで行くと、イタリアの経済そのものがおかしくなるのです。
 また、ギリシャもそのようなことでおかしくなり、EU離脱派が出てきたのですが、ドイツに叩かれて今はおとなしくなりました。そのような点でやはり離脱した後も問題で、通貨リラが復活したときには誰もリラを使わなくなるでしょう。イタリア人だから特にそうだと思います。そうなったときの影響を考えると、直前で止まってしまうという可能性があります。ギリシャの件はイタリア人にとってはあまり教訓になっていないようなので、今後どうなるかわかりませんが、とりあえずこれで政府が形成されるということになります。
 今回のことを心配したイタリア10年債の利回りは、急激に上昇しました。そして今回のコンテ氏の任命を受けてまた急激に値を戻してきています。このように10年債などの利回りは、イタリアも終りかというような敏感な反応を見せました。

【日本の働き方改革】労働生産性の課題

 安倍政権が今の国会の目玉と位置づける働き方改革関連法案が、先月31日、衆院本会議で可決しました。これは残業規制、同一労働同一賃金、脱時間給制度の3つが柱となっているもので、4日にも参院で審議入りし、今国会で成立する見通しです。
 今国会は働き方改革の国会だと言われる割には、中身はあまり大したものがありません。高度プロフェッショナル制度というのが大きな問題になりますが、コンサルタントをやっていた私に言わせれば、余計なお世話だという感じです。
 また、野党も批判をしていましたが、これが隠れ蓑となり、皆を高度プロフェッショナルと呼び、ブラック化するのではないかと言われていますが、これも余計なお世話だと思います。年収でいくら以上の水準だといったことも決めていますが、いい加減にしろという感じがします。
 いずれにしても、制度としては、不当に働かされていると言う人が、労働基準監督署というところがあるので、そこできちんと手続きをして申し出た場合に、本人の名前などを伏せて調査をし、それにより会社に対して匿名の警告が出るというような話なら良いのです。しかし、今はそれをやると会社での身分が奪われるということがあるので、そういった制度を見直すことが先だと思います。
 また、裁量労働性が適用されている働き方ということで、今回問題となったのは企画型の業務というものです。これなどは行政や政治が理解できるものではないと思います。今後はこうした業務が増えなくてはいけないわけです。労働集約型のところはロボットあるいはAIによって置き換えられるので、減らなくてはいけないのです。逆にこういうものをどんどん増やしていかないといけないのです。
 そしてより問題になるのは、フルタイムとパートタイム労働者の賃金水準が違いすぎるということです。日本はその比がほぼ2対1です。一方、フランスあたりだと、100対90ということで、ここの差が大きいことが重要な問題です。企業から見ると、パートをたくさん雇って、そしてそのパートに対する待遇を、給与だけでなく特典面でも非常に低くしているわけです。逆に、フルタイムの人については、クビにできないなど、保護が厚すぎるという側面もあります。その点で、この問題の解消としては、当然のことながらパートタイムの人たちの待遇の改善と同時に、フルタイムに対する雇用の保障、永久保証のような部分を撤廃するような、いわゆるドイツのシュレーダー改革、アジェンダ2010のようなものをやらなくてはいけないと思います。
 労働生産性の問題については、日本はOECDの中でも非常に低くなっています。今後より大切になってくることとしては、間接業務の自動化やコンピュータ化です。これをかなりの高スピードでやる必要があると思います。日本の場合には間接業務が非常に人依存で、SOPというものがなく、標準化していないのです。この部分が大きなネックになっています。
 この20年の間にコンピューター化が進み、他の国は相当進んでしまったのに対し、日本の場合はまだまだ人依存というところが非常に大きいのです。その辺を本当に改善して生産性を上げなければ、当然給料も上がらないということになります。日本はいつの間にか労働後進国になってしまったのです。ブルーカラーの場合には生産性向上ということで、機械化がどんどん進んだわけですが、今回は日本の特徴もあってなかなか進まなかったことで、給料も上がらず生産性も上がらず、気がつけばOECDの中でも最低というところに落ちてしまいました。あの大問題を抱えたギリシャよりも悪いという状況であり、これを改善をしていかないといけないと思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
6月3日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】コモディティ価格と世界経済(近藤雅世)
【前回の記事】
日本円が最も割安と言われる根拠(唐鎌大輔)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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