グローバル・マネー・ジャーナル

2018.5.2(水)

米中貿易摩擦の背景を解説する(大前研一)

2018.05.02(水)
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米中貿易摩擦の背景を解説する(大前研一)

【米中貿易】中国は自由貿易主義へと進むのか?

 日経新聞は(4月)18日、「米、中国ITに警戒心あらわ」と題する記事を掲載しました。これは、アメリカ商務省が自国の企業に対し、中国の通信機器大手ZTEとの取引禁止を決定したのに続き、アメリカ連邦通信委員会も、自国の通信会社による中国製品の調達を禁じる規制を導入すると紹介しています。スパイ活動など、安全保障上の懸念が表向きの理由ですが、技術競争で中国に追い越されかねないとの焦りもにじむとしています。
 これはアメリカの典型的なやり方で、かつて日本もこれをやられ、多くの分野で叩かれたわけです。IT企業としては、ファーウェイと、そこのチップを使っているというシャオミの携帯は取引を禁じています。そして国有企業、国策会社であるZTEのアメリカへの進出ができなくなり、具体的にはこの3社のものを使ってはいけないという通達を出しているわけです。
 いずれにしても中国のIT部門では、アリババやテンセントのような、民生の部分が強くなっているわけですが、アメリカの商務省は日本に対してもかつてこうした議論を使って、次々に嫌がらせをしてきました。今はその矛先が中国に向いているということですが、中国の場合にはこれにあまり慣れていないのです。日本は20年間日米貿易戦争をやり、最後にはどうやってあしらえばいいのか分かってきたわけです。基本的に中国はその方法をこれから学習しないといけないということです。
 中国政府は(4月)17日、外資系自動車メーカーの出資規制を、2022年までに撤廃すると発表しました。2018年中にEVなどの新エネルギー車、20年にトラック・バスなどの商用車、22年に乗用車を撤廃するということで、アメリカとの貿易摩擦をにらみ、市場開放をアピールする狙いです。今は中国側が50%以上持っていないといけないというルールですが、イーロン・マスク氏が、EVに対してはそれをやりたくないとアメリカ政府に働きかけ、アメリカ側も何かあればテスラのようなところは自由にやらせるべきという話が出てきていたのです。
 18年にEV、すなわちテスラを受け入れるという事になります。またトラック・バスに関しては中国ではそこまで完成した業態になっていません。22年に乗用車と言っていますが、22年まで見えないところでまだまだ稼ごうとしているのでしょうか。習近平氏はいつの間にか自由貿易の旗手のようになり、海南島でやったボアオ会議でも、アメリカは保護貿易主義だが、我が国は自由貿易主義だ、などとやっていましたが、よく言ったものです。
 中国のメーカー別自動車販売台数を見ると、例えばフォルクスワーゲンなどはトップ企業ですが、上海汽車と上海第一汽車との合弁でやらされているわけです。また日産なども、東風などとやらされており、東風は同時にホンダとも一緒にやっています。ホンダは他にも広州汽車と組んでいるほか、トヨタの場合は第一汽車と広州汽車と組んでいます。販売台数としてはこうした企業の後に、長安汽車、北京現代、長城汽車などが続きます。このようにいずれも自分一人ではやらせてくれなかったわけです。
 こういう状況から22年になれば乗用車も50%制限を取り除くというわけですが、その時にいきなり一人でやって良いと言われても、これまでパートナーとうまくやらなければいけないという状況で出来上がっているので、今更そのようなことを言われても難しいところです。30年結婚して、今度は自分一人でなんとかやりなさいと突然言われても困ってしまうものです。
 ではなぜ22年まで乗用車を待つ必要があるのか、という議論もある上に、なぜEVは今年から撤廃で、次がトラック・バスなのかといった疑問も出てきます。その間に国内企業を固めようという訳なのでしょう。それで乗用車には4年の猶予を取っているのです。このようなことで自由貿易の旗手のような顔をされても、呆れてしまいます。

【イギリス連邦】次期首長をチャールズ皇太子に決定

 イギリス連邦に加盟する53ヵ国の首脳は(4月)20日、エリザベス女王の次の首長を、チャールズ皇太子とする方針を決定しました。イギリス連邦の首長は世襲制ではなく、加盟国の間で持ち回りにすべきとの案も出ていましたが、エリザベス女王がチャールズ皇太子が後を継ぐことを切なる願いと述べたことを受け、各国がそれに同意した形です。
 私もこのイギリス連邦の会議をBBCで見ていました。非常に厳かな雰囲気の中でのエリザベス女王の演説は、非常に切実なものがありました。彼女は92歳で、実は21歳から71年間、女王をやっています。解説者が言っていましたが、おそらく女王にとって今回のイギリス連邦会議が最後になるのではないかと思ってのことではないでしょうか。息子のチャールズが私を継いでくれることを本当に願っていると話したのです。
 イギリス連邦の国々は53ヵ国で構成されていますが、中でもイギリス女王を君主に戴く国は16ヵ国あります。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで、国王としてイギリス女王が派遣した人が君主代理として現地にいるわけです。こうした16ヵ国に加え、その他にも、インドのモディ首相などが参加しており、エリザベス女王の話を神妙に聞いているのです。
 女王の話の翌日に投票があり、チャールズ皇太子以外の人間を誰かが提案すれば、その人がいわゆるイギリス連邦のトップとなるというルールなのです。しかし、71年間、父親から継いで苦労をしてきて、それをずっと見てきているチャールズに継いでもらうことが切なる願いだなどという演説をされてしまうと、だれも意義を言う雰囲気ではありません。さらに自分が立候補するなどということもさすがにインドのモディ首相やカナダのトルドー首相でもできないでしょう。そんな人がいれば逆に大勢に叩かれてしまうことでしょう。
 女王のあの演説は、これが92歳の自分の最後だという雰囲気が漂っていて、参加者である名だたる国家元首の人たちもびっくりして聞いていました。イギリス連邦は53ヵ国と非常に多くの国々で構成されていますが、ちょうど今、ゴールドコーストでこの連邦のオリンピックのようなスポーツ大会が行われています。そんな時でも国家元首はロンドンに召集されているのです。
 そしてその参加者はとても豪華なメンバーシップです。もちろんイギリス女王がチャールズ皇太子をイギリスの自分の後継者に選ぶということは自由です。しかし、英連邦全体の君主について、あのような儀式がいるものかと私は驚いて見ていました。やはり何と言っても71年ぶりのことなので、前回どうだったかを覚えている人がいないのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
4月22日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【次回の記事】韓国・北朝鮮「板門店宣言」の裏側を読む(大前研一)
【前回の記事】株式市場の現状と今後のポイント(福永博之)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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