グローバル・マネー・ジャーナル

2015.11.11(水)

揺れる世界の金融市場と進むデフレ傾向(田口美一)

グローバル・マネー・ジャーナル

揺れる世界の金融市場と進むデフレ傾向(田口美一)2015/11/11(水)


大前研一学長総監修 資産形成力養成講座 グローバル・マネー・ジャーナル 「最新・最強・最高」クオリティの金融情報とデータ!

第417号!資産形成力養成講座メルマガ

大前研一
資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびに一流講師陣から学ぶ!

【12月より資産運用の学習を開始!】11月25日(水)15時まで

為替・株式の乱高下が続く今、どのようにポートフォリオを組むべきなのか? 資産運用の考え方、実践を学ぶ講座で基礎からしっかりと学びませんか? 「自ら考え、自ら行動を起こし、自らの手で資産を形成すること」 資産運用への第一歩をサポートしてまいります。

【無料説明会】 東京・麹町(11/17)、オンライン(11/19)で開催!

【無料メールセミナー】グラフで分かる日本経済! 登録無料!

【不動産投資】唯一上昇する不動産資産を手に入れよう!

今回のテーマ

揺れる世界の金融市場と進むデフレ傾向(田口美一)

揺れる世界の金融市場と進むデフレ傾向

 中国の株価は、5000ポイントから3000ポイントへと4割下落しました。中国政府、中央銀行はまだ打つ手はあると思います。昨日も準備率と金利を引き下げ、金融緩和をしましたが、その後ヨーロッパ株が上げ、アメリカも続いて上昇し、その後、おそらく来週の日本株も日経平均が下落した分の半値戻しに当たる19000円のやや上の水準まで回復する可能性があるでしょう。これで調整が終わったのではないかという見方も出るかもしれませんが、ボトムラインは変わらないので日本株については厳しい状況だと見ています。中国株に加えて原油価格も下落し、厳しい状況にあると言えます。

 一方、長期金利の動きを見ても、全く自信がなくなっていることがわかります。アメリカは1年前に出口戦略を練ると表明しテーパリングを始めたわけで、今頃はとっくに金利を上げていなくてはいけない状況だったにもかかわらず、金利を上げられないのが現状です。金利を上げられないくらい経済が悪いのだという見方で、さらに金利が下がってきたという流れです。ドイツは、これほど緩和しているのにまだ良くないということで、ゼロ金利からさらにマイナス金利の世界に入りました。おそらく5年債などの金利がマイナス圏にありますが、それをしてもまだ景気が良くなってこないのです。

 そして日本も、破綻でこのようなことをしていてはダメだという状況にもかかわらず、0.3%などという低い水準になってきています。住宅ローンの金利も1%、変動金利では0.5%と、ほとんどゼロに近い金利になっています。おそらく1%で税金の還付を受けるとマイナスになるような低水準ですが、それにもかかわらずあまり伸びないのです。これはデフレーション入りをほとんど決めにかかっているマーケットの動きだと思います。

 市場の状況を見ると、9月の講義から全く変わっていません。リスク・オンとは、投資家がリスクを取ってもよいと判断している状態で、ゴーのサインです。一方、リスク・オフはその逆でストップのサインです。悪いところを探せばたくさんあり、アメリカの金利が引き下げられても引き上げられても、どちらもリスク・オフの要因になりますし、中国、ギリシャ、ウクライナといくらでもリスク・オフの要素を挙げることができます。

 その一方、リスク・オンの話として言えることはというと、世界の中央銀行がずっとお金を刷っているということぐらいしかありません。他にあるとすれば、売られ過ぎたので反動で戻るということくらいでしょう。売っていたものを慌てて買い戻すという動きが相場では最も大きな値動きの要因になるので、変な話ですが、リスク・オフの材料がとりあえずなくなったという時に相場が戻るということくらいしかリスク・オンの要素がないのが現状です。私も20年ほどこうした状況でやってきましたが、この反動の動きをアメリカ人はdead cat bounce、つまり死んだ猫を落としても少しは跳ね上がるという言い方で表現します。こうしたことでしか戻りはあり得ないくらいに、世界のエクイティマーケットは厳しい状態にあると思われます。

 アメリカの景気については、それほど良くないのではないかと思います。現に7月時点では大丈夫だと言っていたにもかかわらず、今回利上げを見送っています。理由は中国経済の不安や原油価格の下落などだと言い、世界のGDPの25%を引っ張る機関車であるアメリカがそんなにいろいろなことを気にしてしまって、このままでは自分のことなど決められないのではないかという不安な見方へとマーケットは傾いてきました。私も相当厳しい状況になったと思っています。今回見送って次に金利を上げた時には相当なマイナスインパクトになるからです。先ほど見たリスク・オフの要素が出てくるのです。そこで、上げるなら早く上げてしまえばいいという声もよく聞かれました。

 しかしそれでも今回上げなかった理由の一つは、こうした景気回復期に早めに大胆な利上げをして大きな失敗をした例があるからです。それが日本です。バブルの最後の時期に日銀に三重野総裁が就任し、思い切り金利を上げてしまいました。この日本のケースから学べということで、バブルの後に経済がまだ弱い状態から徐々に回復したとしても、金利を急に引き締めて経済に強い刺激を与えてしまったら取り返しのつかないことになるということを、どの中央銀行も勉強しているのです。

 イエレンFRB議長も三重野総裁のようなことはしたくないと思っているはずです。ただこうして学んでしまったことで、本当は利上げをしてしまった方が皆安心するところを踏み切れずにいるのです。その不安が市場にも企業活動にもずっと残ってしまっているのです。それにより、アメリカの雑誌などではイエレン議長に対して厳しいコメントが見られるようになってきています。企業経営者もマーケット関係者もどうしていいのかわからなくなっているのはイエレン議長のせいだという言い方をし始めてきています。

日米欧、金融正常化への険しい道のり

 それではお札を擦り続ける中央銀行の異常な政策は、一体いつ終わるのでしょうか。非常に興味のあるテーマだったので私もいろいろと調べてきましたが、ついにその分析が出ました。日銀の先輩にあたる田幡氏がIMFから依頼を受けて、政府、中央銀行がどのくらいのタイミングで緩和政策を止めることができるのかを分析し、結果を発表したのです。これは日経新聞の経済教室にも掲載されましたが、かなりショッキングな内容で私はこれを非常に重要視しています。

 分析によると、日本についてはもしかしたら20年かかるかもしれないとしています。つまり正常化は2035年です。アメリカ、ヨーロッパも10年ほどかかり、2025年頃としています。もちろん日銀出身の田幡氏はマーケットのこともよくわかっていて、学者のようにただ数字だけを分析したのではなく、どのようにオペレーションをするかも考えて、現実的な分析を行っています。それによると、おそらく今後の経済は、景気循環で悪くなることもあるので簡単には正常化できず、むしろ緩和を続けなくてはいけない局面もあり、トータルするとこのくらいかかるということなのです。

 バランスシートでメガバンクの資産サイドにあった国債は日銀に渡され、その代わり現金をもらうわけですが、それを日銀当座預金に振り替えているということで、それが今200兆円あるのです。今後4年分の赤字国債のファイナンスができたとして、さらに今ある200兆円の当座預金で国債を買うとしたら5年分になるので、一応9年分の赤字国債が吸収できるということになります。これをどう捉えるか、意見は様々だと思います。

 日本はあと20年、ゼロ金利が続くことになるのです。財政破綻はないと思っていますが、財政が改善するかというと厳しいので、今後もゼロ金利で国債をずっと発行していって、ほとんどコストがかからないものの、歳出の40%は利払い費になっていきます。そうした中、金利が上がってしまったらあっという間に歳出は膨らんでしまい、それこそ財政破綻の一因となってしまいます。それを防ぐにはゼロ金利を続けるしかないということなのです。私自身、後5年間は今の政策が続くだろうと思っていて、2020年、東京オリンピックまでは今の政策で、財政破綻もないということをコメントしてきましたが、今回の田幡氏の分析はさらに強烈な内容だったわけです。

 世界ではデフレが続き、ゼロ金利が続き、良くない言い方ですが金利では商売できないという状況が続きます。このことは、逆に言えば、金利ゼロという世界観が長く続くことを考えていかないといけないということでもあります。ハイパーインフレだなんだと煽るのは簡単ですが、その方向に全てベットしてしまい、もし5年、10年に渡って逆の姿が出てきたとしたら、大きなミスということになるわけです。今回の分析は、世界の金融市場において非常に大きなインパクトのある結果だと思います。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
金融経済アナリスト
前クレディ・スイス証券副会長
田口 美一
10月24日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

資産形成力養成講座 加藤

資産運用はインフレ経済下で特に重要になります。デフレ下では資産運用をしなくてもモノの価値が下がっていきますが、インフレ下ではモノの価格上昇を超える運用をしなければならないからです。資産運用は、株式・債券・為替・コモディティ・不動産など多岐に渡りますので、総合的な理解や考え方が求められます。世界標準の資産運用を学び、第一歩を踏み出してください!

【無料説明会】 東京・麹町(11/17)、オンライン(11/19)で開催!

【無料メールセミナー】グラフで分かる日本経済! 登録無料!

【不動産投資】唯一上昇する不動産資産を手に入れよう!

資産形成力養成講座では、Facebookページでも金融にまつわる最新ニュースなどご紹介しております。ぜひこちらもチェックしてください。

「資産運用を日本の国技に!」「世界最適運用で世界標準の5%~10%の利回りを目指せ!」大前研一学長の掛け声のもと、2006年にスタートした資産形成力養成講座。5000名を超える受講生が学んできました。

これまで長期デフレを経験した日本。デフレに慣れ、インフレの想像がつきにくい方も多いかもしれません。しかし確実に、デフレ脱却に向けて動き出しています。インフレとはモノの価値が上昇する世の中。私たちはそうした物価上昇以上に持っている資産を高めていかないと生活力(購買力)を落としてしまうことになります。

金融機関など他人任せにするのではなく自ら設計することで、手数料などを考えると2%程度の利回りの差になることも多々あります。毎年2%の差は、例えば500万円運用している人にとって、10年で100万円以上の差になって現れます。欧米では学校教育で「お金」について学ぶ機会がありますが、日本ではほとんどありません。みなさんも、世界のお金の流れを学び、リターンを実現できる資産形成力を高めませんか?

それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!