グローバル・マネー・ジャーナル

2019.7.10(水)

2000万円問題、解決の障壁はアベノミクス?(大前 研一)

   
2019.7.10(水)
2000万円問題、解決の障壁はアベノミクス?(大前 研一)
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2000万円問題、解決の障壁はアベノミクス?(大前 研一)

麻生氏の低迷

金融庁の金融審議会がまとめた報告書について、麻生金融担当大臣は11日、正式な報告書として受け取らない考えを示しました。報告書は、夫婦で95歳まで生きるには年金だけでは老後の資金を賄えず、2000万円の蓄えが必要になると試算したものですが、麻生氏は世間に著しく不安や誤解を与えていると指摘しました。
麻生氏は暴言と迷走と失言が有名ですが、今回ほど迷走したことは珍しいです。最初は自分が良いと思って発言したものの、これほど批判が集まり、読んだのかと聞かれても前の方を少し読んだだけで実は読んでいないなどと言っています。
報告書は受け取らないなどと言い出して、金融庁がとんでもない誤解を生んだと人のせいにし、自分が諮問したにもかかわらず金融庁の人に国会で謝らせました。さらには年金を受け取っているのかと聞かれて、受け取っているのかどうかわからないと言うのです。78歳なので受け取っているに決まっていますが、調べてみて結果的に受け取っていたことがわかりました。
ただ年金といっても16万円で、誤差の範囲に過ぎません。麻生氏は飲み代だけで、一年間に2000万円を超えていると言われているのです。そして報告書を審議しようと言っても、森山氏が、受け取っていない報告書なので、なかった報告書に基づいてやることはできないなどと言い、わけのわからない迷走を始めたわけです。

老後の不安は少数派

この問題は実は平均値の問題なのです。日本の半分以上の人は老後の不安など無いのです。個人金融資産1800兆円の半分以上は60歳以上の人たちが持っているわけで、一般的な年金受給年齢である65歳の段階でもう老後の不安はないと言う人たちは少なくないのです。
そうした人たちは今回黙っているのですが、なんとなく自分も影響しているように思っているのです。その理由は、ドイツ人やアメリカ人たちと違い、いわゆる人生のファイナンシャルプランというものができていないからです。もしかしたら自分にも影響しているかもしれないと思った人が、実際の数字よりも多いということなのです。
私の計算では、この問題を抱えている人は決して多数派ではないのです。厚生年金ではなく、十分な蓄えもなく、国民年金のみを受給している人は受給額が満額でも6万5,000円程度なので、この人たちが非常に苦労するということなのです。
それならば、その人たちに対して、生活給として16万円の最低保障を行い、生活には支障がないようにしますと言えばそれで終わることなのです。ところが金融庁が出したものは、金融機関、銀行が苦しいので、それを運用してくださいと主張しているのです。これはどうしたものでしょう。安倍黒の政策では金利を0にしたので、運用しても全く増えません。安倍黒、すなわちリフレ派のやっていたゼロ金利政策にも問題があるのです。

2000万円問題、金利4%がカギ

実は2000万円を持っていて4%の金利なら、年間80万円になるのです。不足しているのは年間60万円ということなので、税金で20万円を持っていかれるとしても60万円にはなるのです。つまり4%の金利がつけば、それでうまくいくのです。
なぜ4%の金利が付かないのか、私は以前から日本のように資産リッチな国は、金利が高いほど景気が良くなると言ってきました。しかし実際の政策ではその反対のことをやってきたわけです。
その理由は借金だらけの中小企業を救うためなのですが、安倍黒がいくら政策をやってみても、物価を2%上昇できなかっただけではなく、銀行も潰れてしまう、そして国民も潰れてしまうという結果になるのです。金利を4%にし、2000万円持っていればそれが80万円を生むというわけで、この問題は一気に解決するのです。

本質的な問題はアベノミクス

本質的にはアベノミクスが問題を大きくしているわけで、アベノミクスの持っているおぞましさというものについて、ここで一気に議論するべきなのです。日本のように資産リッチで1800兆円も個人資産があるところで、この報告書のような議論をしているのは馬鹿げたことなのです。
確かに金もなく蓄えもなく、65歳の段階でどうしようもないという人たちもいるわけですが、その人たちには16万円を払って面倒を見ることにする方が、結果的には安いのです。このように、この問題は天変地異が起こるような問題では無いのです。日本は十分にこれに対処ができるのです。
しかしアベノミクスはもう手を引いてもらわなくてはなりません。黒田総裁も含めて、その政策に問題があるにもかかわらず、誰も指摘していないのです。このような問題を、レポートを受け取る、受け取らないなどとやっている状況は、私に言わせるとあまりにもお粗末で、日本の知力の衰えの象徴的なものだと思います。
金融庁のこのリポートはずるいリポートで、金融庁らしく銀行で運用してもらおうと狙っているので、その点では非現実的な意図があります。それは別にしても、結局は金利を4%にしろとひとこと言ってもらったら全てが終わる問題なのです。

先進諸国の年金給付水準(所得代替率)の比較

先進国の年金給付、所得代替率を見ると、最後にもらっていたお金のほぼ100%が給付されるのがオランダやデンマークなどです。
日本は全然低い割合ですが、任意私的年金などでカバーしている部分がかなりあるのがわかります。これがないのが国民年金のみの人たちなのです。つまりその人たちのために、その手当てをきちんとするということだけで、議論は終了できる問題なのです。
また、確定拠出年金の加入者は増えていますが、金利が4%だったら100年安心ということになるのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
6月16日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【前回の記事】ドラッグストア大手二社、経営統合を検討 (大前 研一)

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