講師コラム

2017.11.20(月) 講師コラム

【第1回】日本銀行の3つの役割とは何か?

日本銀行の3つの役割とは何か?

日銀の役割は「発券銀行」「政府の銀行」「銀行の銀行」

日本銀行に約11年間勤めました。日銀では大学を卒業後3年ほどはいろいろな部局で経験を積みます。同期が40人位いますが、皆ありとあらゆる部署に配属になりました。私は短期経済観測調査という係に配属になり、企業に四半期ごとにアンケート調査を行うという部署で、アンケートデータを集めて分析する、一番下の新人として調査・分析のサポートをするといったことを経験しました。

代表的な部署を挙げますと、日本銀行の一番大きな役割というのは「発券銀行」、貨幣を発券することです。皆さんがいつも使っているお金には日本銀行券と書いてあるのですが、発行する毎に、市中の銀行から古くなったものが還流されてきます。これを精査し、正しい金額が戻っているかをやりとりする発券局がやります。通貨の発行、及び精査業務が膨大な作業量ありますので、それらが粛々と行われているかどうかをチェックしている部署というところが存在します。

 それから「政府の銀行」という役割もあります。 分かりやすく言いますと、公務員、国立病院等、公務員の方の給与がきちんと支払われているか。普通は市中の銀行から払われているのですが、政府の銀行ですので、勘定は日銀の口座からたとえばA銀行にお金を渡し、A銀行から給与として支払われるという流れとなりますので、そういった政府の銀行としての業務、この作業量も膨大にあります。

 そしてもう一つが「銀行の銀行」。いわゆる金融政策を行う部署、今で言う金融市場局というところです。海外のBIS(国際決済銀行)だとか、外貨準備の運用の事務を行う部署、国際局というインターナショナルな部署など、様々な部署に一斉に1年くらい配属になります。

 その任務が終わると地方(日本の33カ点に支店があります)に配属になり、これまで経験した業務を今度は小さな規模で、各地域で政府の銀行、発券銀行、そして銀行の銀行としての役割を担います。私は静岡に配属になり、「銀行の銀行」事務を行いましたので、当時は電卓とかそろばんを入れて窓口業務をしました。ただお客様は、普通の銀行ですと個人の方が窓口に来るのですが、日本銀行の支店の窓口に来るのはほとんどが銀行関係者ですので、銀行の方が小切手を持って預金に来るとか、単位も規模が大きくて、何億円という規模を車で運んで小切手を持ち込む、それを窓口で登録して帳簿を付ける。そんな仕事をやったりしました。

 また、地方の企業の産業調査ということもやります。調査統計局の地方版のような仕事もありまして、静岡のさまざまな企業の調査をして、今の景気がいいのか悪いのかなど調査をします。

 そしてもう一つは、地方にある地方銀行や信用金庫の検査です。これを「考査」というのですが、そういった業務をする部署もありますので、ここまで紹介した一連の業務を2年間くらいかけてジョブトレーニングで一通り勉強し、日本銀行の仕事とは何かということを学習する期間がまずありまして、そしてその後(通常は)本店に戻ってきて、本当の実務をやるのです。

日本金融の夜明けを共に歩む

 その後専門的な部署に配属されたのですが、私は為替の介入をするという部署で、それが本格的な日銀マンとしてのスタートでありました。時代はプラザ合意直前、1984年の為替、日本の金融が爆発的に大きくなろうかという前夜のタイミングでした。日本の為替市場の調査、外勤の為替ディーラーたちと日々の状況について市場環境分析したり、彼らの為替相場の見通しを聞いたり、あるいは輸出メーカー、輸入メーカー、商社も為替に携わっていましたので、為替相場、どういった為替予約をしているかをヒアリングしていました。

 その後バーゼル、今でいうBIS規制みたいなものの調査・分析をするという仕事もしまして、まさに為替に次いで新たな金融商品、具体的には通貨スワップ、金利スワップ、変動金利などの発行が認可されて、それらを使ってビジネスをする金融機関がどんどん増え始めたところで規制監督するという経験もしました。84年から87年にかけて日本、世界が金融市場、金融商品が飛躍するタイミングで、規制監督、調査分析する仕事を主に担当しました。

 引続き1980年代後半、バブル経済が大きくなり始めたタイミングで、国内大手の金融機関、メガバンクや信託銀行、今はなき長期信用金庫などの具体的な融資、日々の資金繰り、銀行のポートフォリオ運用全般を日々調査・監督する仕事をしました。今は死語になってしまった窓口指導というものをやっていたタイミングで、多くの銀行を担当しまして、日々貸し出し姿勢、金融市場でどういう運用をするなど日々調査・監督、金融オペレーションという債券オペ、輪番オペ、日銀貸し出しなど日々の金融調節など具体的に携わる部署に4年間ほど配属になりました。

 まず国内の主要なプレイヤーである銀行及び、その人たちが実際に行動を行う金融市場、インターバンク市場、債券市場、株式市場、貸出市場等々、具体的な調査監督、金融オペレーションをするといった為替介入から始まり、7~8年、ほぼ日本銀行、世界の中央銀行が行っているであろう金融政策の第一線の仕事を内外市場に亘って担当させてもらいました。

イギリスの伝統方法に学ぶ個人における海外投資術

お客様のニーズによってファンドの運用スタイルは大きく変わる

私は10年間のファンドマネジャー経験の中で、何万回もポジションを取ってきましたが、運用スタイルはお客様のニーズによってかなり違いました。例えば短期間の積極的な運用によって、リスクは高くなったとしても高いリターンを求めてくるお客様は、プロの金融機関が委託するケースに多く見られました。その場合、非常に早い回転、ポジションの変更を期待されていますし、いわゆるヘッジファンド的な10%を超える利回りを期待されていますので、一日の中でもかなり回転をするとか、1週間の中でも何回もポジションを変えるとか、デリバティブも駆使するとか、とにかく相当神経も使いますし、24時間トレーディングをしていました。

一方で、年金の場合はそういった傾向はなく、四半期ごとに年金基金との打ち合わせを行い、運用方針を四半期ごとに決めます。 例えば、今回景気が厳しそうなので株式のポートフォリオのウェイトを落として債券のポートフォリオを数パーセント上げようと決めるとすると、それに沿って一週間位かけてポートフォリオのリバランスのようなことを行い、大体の場合はそれで終了となります。中にはパッシブ運用みたいなものもあり、ウィークリーベースでポートフォリオの見直しを行い、コンスタントにマーケットを見るのではなくて、むしろ対象となるインデックスが変わることによって運用を変えていく必要がありました。委託するお客様によってニーズやそれにまつわる運用方針はかなり違うことがお分かりになると思います。ですから基本的に年金のファンドマネジャーと、ヘッジファンド的なファンドマネジャーは別の人間が担当するというのが通例です。

 

イギリスの伝統方法に学ぶ個人における海外投資術

 今から20年ほど前の話になりますが、ロンドンのファンドマネジャーの調査分析方法で、「各国の中央銀行に直接赴いて調査を実施する」という古き良き伝統がありました。これは、イギリスやスコットランドが得意としていた50-100年での国際分散投資の歴史が背景にあるのですが、自国の経済が成熟化してきてしまって、もう少し発展の見込める他の国に投資することによって超過利益を得ようという思いから始まっています。

 具体的には、スウェーデン、オランダといった様々な国の中央銀行に赴き、フィールドリサーチといって実際に自分の足で調査し情報を得る訳です。今でいうインサイダー取引とは全く別の話で、そこでは今後の見方とか、インフレをどう考えるかなど、高尚な議論を行います。例えばポンドに対してスイスフランの動きがどうなるか、為替動向が先行きどのように変化していくのかについて調査をする訳です。もっと詳しく言いますと、日本の場合で考えたとして、仮に円安になった場合、海外投資をするとリターンが上がります。ですから通貨が動くのかということにポイントを当てるわけです。逆に言うと、「分からない国には投資をしない」ということです。自分で考えて納得して、これから自国通貨がこうなるなという予測をもって投資をするということですね。それが為替の部分です。そして金利の部分に関しては、中央銀行の政策が大きいことと、景気の見方が大きいこと。これを合わせて金利と為替で掛け算してどうなるのか、ということを行っているのが、基本的にイギリスの国際分散投資を担当するファンドマネジャーのやり方です。

 ここで個人の場合に転換してお話しますと、結果オーライ的なことが多く見受けられがちです。今から数年前のことですが、インド株にしても中国株にしても、ブーム時に2倍になってしまうことは結構ありました。エマージング(新興国)通貨が一気に盛り上がったときには日本からもエマージング通貨、ブラジルレアルであるとかトルコとか南アフリカのランドとか、それらの通貨が積極的に売り出されました。しかし、「なぜ強くなっているのか」ということが分からないまま、一方的に日本がゼロ金利の中でエマージング通貨の金利が高いというところだけに着目して投資をしていたとすると、もう少し考えたほうがいいのかなと思います。つまり、「国内投資ではなく海外投資に向かう理由は何なのか」ということをまず考える必要があると思います。ただ単にA国の通貨の方が良さそうだということになりますと、別にA国ではなくて金でも海外の不動産投資、グローバルリートなどでも良かったわけですよね。ですので、ただ金利が高いからというだけではなくて、きちんと調査をしてよくわかった上で投資しないと、その後発生するトラブルに対応出来なくなってしまう危険性が十分にあるのです。

先般あった話では、イタリア国債やスペイン国債などを良いと思って買ったら、いつの間にかとんでもなく債券価格が暴落していたと、いわゆるソブリンリスク(国に対する信用リスク)が表面化した時の話がありました。こんなはずじゃなかったと慌てて証券会社に問合せると、買った時よりもずっと値段が下がっていて、今換金すると1000万投資したものが700万になってしまっているとかいう話を聞いて、困った、どうしようとなるケースです。これは最初の時点で、なぜそこに投資するのかということを十分に理解しないまま投資するということに問題があるわけで、重要な点は、「分からないところには投資しない」ということなのです。海外投資をする時のポイントは、事前に十分に分析、理解した上で決めるという、単純なことがとても重要だということです。

私も実際、1995年、為替が80円台に入ってきた時に七夕介入というものがあり、7月7日以降、急に80円から円安に向かっていくというタイミングで外債投資に踏み切ろうということになったことがあります。この時には、事前に2回ほどニューヨークに調査に行き、何度も関係各所を回り、今のドルがさすがに売られ過ぎていないか考えました。そして投資するからには委託を受けているお客様、年金や法人事業関係者の方々に対しても、こういった理由で投資を始めたい、などとかなり綿密な打合せを重ねた上で始めたという経緯があります。アドバイスとしては、こういった一連の「段取り」を踏むということが、個人の方にとっても重要なことだと思いますね。

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