グローバル・マネー・ジャーナル

2018.10.10(水)

企業の想定為替レートと上昇する物価(福永博之)

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企業の想定為替レートと上昇する物価(福永博之)

日銀短観でみる企業の想定為替レート

 9月の日銀短観で示された企業の想定為替レートは、107円40銭。前回6月調査のときには107円25銭でしたので、そこからほとんど変わっていません。上期下期を比較しても、ほとんど変わっておらず、107円台が製造業の想定為替レートです。そして今、実際の為替レートは114円台を付けているので、製造業に関しては輸出に為替の影響がプラスに働く可能性が十分にあると考えられます。
 ただし、今回の日銀短観、状況判断DIを見ると、大企業製造業は下向きになってきています。
 一方、大企業非製造業は横ばいです。他の経済指標では、例えば内需の景況感を示す景気ウォッチャー調査では、足元、先行きともに改善を示しています。先行きは50を超えて、景況感は改善するとみられているわけです。同様に、日銀短観でも、非製造業、つまり内需に関しては良いという実感が示されています。
 その一方で、短観では製造業が下向きとなっていて、鉱工業生産でも同様に、実績は下振れを示しているのです。
 これらのことから考えると、今回、まもなく出てくる決算に関しては、為替は確かに円安で、業績に寄与する可能性はありますが、もしかすると人件費の増加や原油価格の上昇によるコストの増加が、収益を圧迫している可能性があるのではないかと考えられるのです。もちろん景気は悪くありません。しかし、こうしたコスト高などが景況感を圧迫している可能性が、今回の経済指標で数字に現れているとも考えられ、少し気になるところです。
 続いて短観の中小企業の数字を見ると、製造業の業況判断DIは、下向きですがほぼ横ばいです。
 一方、非製造業は上に向かっています。やはり国内、内需に関しては、中小企業でも景況感が良く、製造業もそれほど悪くなってはいない状況です。これは不思議な現象で、大企業がくしゃみをすると中小企業は寝込むなどという例えがありますが、今はそうはなっていないようです。
 次に、業況判断の実績値と、前回調査をしたときの予測値の差分を示したグラフを見てみます。棒グラフが上に伸びていれば、前回の予測を実績が上回ったという上振れを示しています。反対にグラフが下に伸びている場合は、下振れということになり、悪化しているということになります。大企業製造業のグラフを見ると、今回は下振れになっています。やはり大企業製造業の今回の決算は、意外とマーケットが期待しているほどは上振れしないのではないかという印象です。想定為替レートは同じままで、上振れ余地が大きくあるように見えますが、実際の進捗率が低いなどといった状況が隠れているかもしれません。
 投資家からすれば、もっと見通しをあげても良いのではないかと思いますが、やはりコスト増などの影響、また貿易摩擦の影響もまだ不透明なので、日米通商協議等の結果が出るまでは、慎重に見る必要があるでしょう。まだ現実に悪化が示されているわけではありませんが、センチメントとしては下振れしているということを頭に入れつつ、今後の決算発表、特に製造業は注意して見ていく必要があると言えます。
 一方、非製造業の方は予測値との差分も上振れしています。上振れが長く継続しているので、国内の景況感は非常にしっかりしていると言えるでしょう。
 さらに中小企業を見ていきます。こちらは製造業も上振れです。そして、非製造業も上振れですが、その幅が前の月を上回ってきています。こうした状況を見るにつけ、つくづく不安に思うのは、やはり来年10月の消費税の引き上げです。使い道を決めている話なので止めづらいということはありますが、本当に実行されるのでしょうか。景気もこれだけ良くなってはきていますが、もっと大きくアクセルを蒸して加速させる必要があるのではないでしょうか。好景気のアメリカでさえ減税をやって蒸して、さらに所得税減税も恒久化しようとしているほどなのです。
 そうした中で、日本が増税をするなどと言っていても良いのでしょうか。これまでにも消費税導入や金利の引き上げなどで景気を冷やしたことがありましたが、今回また同じことをやるのでしょうか。非常に心配です。まだ年内、そして来年の春ごろまでは景気も良いとは思いますが、その頃から実際に消費税引き上げの話題がどんどんと具体化してくると、駆け込み需要などが出てきて、その後大きく落ち込むという状況になってくるので、注意した方が良いでしょう。
 日銀短観、今回の特徴は、製造業が想定以上に下振れしているところが注目ポイントで、決算の数字を慎重に見ていくことが必要です。

上昇する物価

 消費者物価指数の推移を見ると、物価はじわじわと上昇してきているのがわかります。これが政策金利や長期金利にどのような影響与えてくるかが気になるところです。日銀が今後、政策を変更するのではないかと言われる可能性があるからです。
 ただ、7月に日銀黒田総裁が示した微修正では、このように物価がじわじわと上がってきている中で、金利の上昇を容認すると言いました。これによって、このように物価が上がってきても、政策変更をするのではないかとは言われなくなってきています。
 少し前までは金利を0に定着させるとしていたことから、少し物価が上がったり、金利が上がったりすると大騒ぎしていたわけですが、実際の長期金利は足元上昇してきているものの、マーケットは右往左往するようなことは起きていません。なおかつ、物価の上昇と、金利の上昇の動きが似てきていることがわかります。このように、金利が上がっても、マーケットは混乱する状況にはならず、これはマーケットが織り込んできた状況になっていると言えるでしょう。
 物価の上昇に関しては、原油価格の上昇が反映されているという見方もあるかと思いますが、実際に2008年から2009年にかけて原油価格が100ドルを超えたときの水準を、基準値は違うにせよ大きく上回ってきています。今回は原料高や人件費の上昇などから、物価上昇が起こっている可能性があります。今年の4月以降、価格の改定、値上げの話もいろいろ出てきており、10月以降には売れ行きの悪いものの生産が中止されるという話も出ています。それにより新たな製品が出てくるわけですが、それはある意味値段が上がって出てくるという流れなのです。
 この数字は生鮮食料品を除いているので、災害によって食料品の値段が上がったことは反映されていないわけですが、それでも上がってきているということは、コスト高、原料高などが価格にじわじわと反映されてきていると思われます。一気に上昇するのではなく、じわじわと上がってきているという点で、良い物価上昇であると言えます。さらに金利の上昇と連動して緩やかに上がっている点も、安定感があり、マーケットとしては好感する要因であると言えます。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
株式会社インベストラスト 代表取締役
IFTA国際検定テクニカルアナリスト
福永 博之
10月4日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】第4次内閣発足から見る未来(大前研一)
【前回の記事】
日米通商交渉 ちゃぶ台返しは起こるか?(大前研一)

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