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2018.08.08(水) |
企業業績の推移をウォッチせよ(福永 博之) |
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資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびに一流講師陣から学ぶ! |
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金利上昇のインパクトは?
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長期金利の推移のグラフを見ると、直近大きく上がっているように見え、急上昇に思えるかと思います。このように金利が上昇してきたのは、報道によって、日銀が金利の上昇を容認するのではないかという見方が出たことが背景です。
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アメリカが利上げを行って、なおかつECBも緩和の縮小を決定し、では日本はどうするのかというところで、横並び意識からこうした見方が出てきているという形です。しかしグラフを見ると分かるように、上昇しているといっても、0.08%程度で、0.1%にも達していないのです。
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最近、ラジオ番組のアンケートで、住宅ローンについて、固定金利と変動金利のどちらを選ぶかという調査があり、その回答は固定金利が多かったのです。
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それまで私は古いイメージを持っていたので、通常は固定金利と変動金利であれば、変動金利の方が低いので、固定にするのはどうなのかとまずお答えしたのですが、ところが実際には今はマイナス金利であり、長期の金利と変動金利がほとんど変わらないか、さらに長期の方が低いこともあるのです。10年でも1%未満という水準なのです。そうすると固定金利で長く組んでおこうと考えるのも当然です。
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今回のような金利の急上昇で不安を持つ方もいるかもしれませんが、実際の住宅ローンなどの金利は、この長期金利がわずかに上がったからといって、1%を超えるような状況には全くなっていないということです。
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ただ、この金利の変動によって、景況感が悪くなるという状況ではありませんが、上げてしまうとマーケットへのインパクトはそれなりに出てくるので、その点だけは注意して見ておく必要があると思います。
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株式市場 中国の景気対策が大きなポイント
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ファンダメンタルから見てみた株式市場の今後のポイントとして、日経平均株価の1株当たり利益の推移を定点観測で見てみます。
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ちょうど決算発表のピークを迎えた5月8日の時点では、主な企業が今期の業績見通しを出しています。そこでの見通しは1株当たり利益が1716円でした。これはとても高い値で、過去最高の水準です。
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そこから実際に今の状況を見てみると、決算発表はこれから本格化してくるわけですが、現時点では1株当たり利益は50円ほど低下しています。業績面では伸び悩んでいるというのが見方です。
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前期との比較で見ると、前期は1500円台なので一応プラスではあります。しかし5月と比べて低下しているということは伸び悩んでいることを示しているので、その状況を見て外国人投資家の動向が売り越しに転じるのか、それとも日銀のETF買いで支えられるのか、というところが注目となります。日銀の買いも、日経平均型からトピックス型に切り替えるとなると、マーケットにどんな影響を与えるのかというところも注目です。
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また外部要因としては、貿易摩擦の懸念が挙げられます。アメリカではGMが減益となりました。アメリカが鉄鋼とアルミニウムに関税をかけたために、GMが輸入している原材料が値上がりし、それにより業績が悪化した状況です。日本の企業はまだそこまでの影響は現れていませんが、そうした影響が知らないところで起きていて、第一四半期の決算発表に出てくる可能性はあるでしょう。
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そして中東の地政学リスクも意識されます。イランへの攻撃、制裁等の行方がどうなるのか注意が必要です。
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さらに金利動向長期金利が上がるのかどうか、また為替動向が円安に振れるのか円高に振れるのか、ちょうど分岐点のところにきているので、しっかりと方向感を見極める必要があるでしょう。さらに株価が上昇するためには、こうした内容の改善が必要となります。
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加えて、中国や世界景気への不安の後退や、業績への期待も重要です。中国は景気対策を本当に打ってくるのかどうかが大きなポイントになってきます。
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業績予想という点で見ると、現在1株当たり利益は1660円台なので、1650円がもし現実の落ち着きどころとなると、予想PER14倍まで行って、ようやく株価は2万3100円となります。現在PERは13倍台なので、利益がそのままだと2万3000円に届かないということになりかねません。今回の決算発表で1株当たり利益が上昇しない場合には、売買タイミングを誤らないようにしないといけません。下げているからといって、押し目買いと安易に考えてしまうと、株価は下げないまでも戻ってこない、上昇しないということになりかねないので、そこを注意しておきましょう。
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一方で、もし1750円まで1株当たり利益が上昇し、PERも15倍まで行けば、株価は2万6000円台となってきます。PER14倍台としても2万4500円です。8月の業績予想で、今期業績の期待が高まる必要があるわけです。PERは、ある意味人気投票とよく言われますが、成長期待があるとどんどん買われるのです。一方で成長期待がないと、いわゆる万年低PER株、万年割安株というような流れになりかねないので、その点も要注意です。
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米中関税引き上げ合戦による日本経済への影響
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貿易摩擦の影響は、GMの例にあるようにアメリカ国内で既に出てきています。日本側としては輸出をする方なので、関税をかけられる側となり、輸出関連企業への影響を想定しなくてはいけません。アメリカに輸出している割合が多い企業は、ものによってはもろに、売れなくなるという影響を受けることになります。
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しかし、逆に関税をかけられても売れるということも考えられなくはありません。つまり、GMは関税をかけられた高い鉄鋼やアルミニウムを使っているわけです。量は減らしているかもしれませんが実際に使っているという事は、売れてはいるわけで、ゼロでは無いのです。
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そのように考えると、貿易摩擦の影響も、100か0かということではなく、ある程度売り上げが減るというところでおさまる可能性もあるでしょう。もしそれが長引いて、100から70、50、30、20と、どんどん売り上げが減るようなことになれば大変ですが、そこまでのことになるとは限りません。 |
まずはアメリカへの輸出比率の高い企業はどこなのか、四季報や企業の決算報告書などに出ているので、それを調べて、どんな影響が出るのかをピックアップすることが重要となってきます。
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【講師紹介】 |
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ビジネス・ブレークスルー大学 株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師 株式会社インベストラスト 代表取締役 IFTA国際検定テクニカルアナリスト 福永 博之 7月30日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。 ▼詳しくはこちら |
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【次回の記事】日銀金融政策決定会合の影響を分析(田口 美一)
【前回の記事】外国人労働者受け入れ拡大へ(大前研一) |
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