グローバル・マネー・ジャーナル

2019.3.13(水)

国内株式相場足元の動き(藤本 誠之)

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国内株式相場足元の動き(藤本 誠之)

相場の考え方

 相場展開を考える基本的な考え方として、株価=EPS × PERであることが挙げられます。株価は、1株当たりの利益と株価収益率が掛け合わさったものなのです。現実の数字である1株当たりの利益に対し、PERはその夢の大きさであり、現実と夢の掛け算で株価はできあがっているのです。
 また、EPSは1年分の利益なので、PERはその何年分かと考えればよく、それがPERの倍率ということになるわけです。世界的には14倍から18倍が、先進諸国の標準と言えます。

予想EPSと株価の連動

 日経平均の予想EPSと日経平均株価の推移をグラフで見てみます。野田前首相が解散宣言をし、アベノミクスが始まったその日からの動きを見ると、やはり予想EPSが上がることで、実際の日経平均が上がったということがわかります。企業業績が良くなったから株価が上がったという、非常に教科書的な動きをしています。
 よく見ると、予想EPSより、日経平均の方が若干先行して上げてきています。予想EPSが上がるから日経平均が上がり、予想EPSが横ばいで動くのを見て日経平均も横ばいの動きとなっています。EPSが上がるのを見越して株価は先に上がっているということです。EPSが長い間上がらなくなっているところでは、日経平均もぐだぐだと下げてきていて、その後EPSが上がる兆しが見えると、再び日経平均は先んじて上昇しているという場面も見られます。
 ただ、直近の所ではEPSが保たれているのに日経平均が下落する動きになっています。ここでは市場がEPSが下がるというふうに思っていたからこの動きになったのでしょう。やはり10-12月期の決算発表で、米中貿易摩擦によって中国の状況が非常に悪くなってきたことで、日本にも悪影響が出て、企業業績も悪化するだろうと見られていたのです。
 また実際に業績も悪化しました。トヨタが5000億円のマイナスを出したり、日立が3000億の特損を出したりしたことで、EPSは1790円程度まで上がっていたものが1720円台まで落ち、足元は1740円程度になっています。ただそれでもたった50円しか落ちていないわけですが、株価はその動きを増幅した形で落ちてしまったということなのです。足元EPSが高止まっているにもかかわらず株価が戻ってきた動きは、この開きを縮小する動きだと言えます。今後はEPSのグラフが下がり、株価が上がり、その2つが近づく動きとなるでしょう。
 ただその後、4月1日以降はまた変化が予想されます。今のEPSは、2019年3月期、今期末の予想値によるものですが、4月以降は今期は終わり、2020年3月期、1年先の予想ということになってきます。そのタイミングでEPSが大きく動くわけです。
 今回に関してはやや下がりやすい、減益になるという予想を織り込む動きが出てくるのではないかと思います。
 ただ、足元はEPSが少し下がってきたことで、2020年3月期の予想との差が少し縮まるので、結局は今期に関してはこのままの水準で、その後の来期2020年3月期に関しても、EPSはそれほど強烈に下がることはないだろうと思います。日経平均も緩やかに、一旦は戻るという形になるということが読み取れると思います。

国内株式相場今後の動きへの読み

 アベノミクス相場の平均値を見ると、予想EPSは15.06倍であります。高いところでは18倍、低いところでは10.87倍と、11倍割れまでありました。平均すると15.06倍ということで、もしそこまでPERが高くなれば、日経平均は2万6214円という水準が出てきます。これはさすがにないとは思いますが、足元で考えた場合、14倍程度はあっても不思議ではない状態だと思います。
 日経平均は3ヶ月前からは下がっています。目先で考えた場合、やはり問題は、5月1日からの10連休だと思います。ここから連休までのスケジュール感から相場の動きを考えてみます。
 今年、年末年始は6連休になりましたが、その間に日経平均はドスンと下がる動きになりました。この経験から連休は不安という投資家も多いでしょう。しかも私が証券会社に入ってから、10連休というのは一度も体験したことがありません。日本で10連休になったことなど、これまでなかったのです。銀行も、病院も止まってしまったら、一体どうなってしまうのか、生活面でも大変なことが起こると思います。それでも10連休はやってくるわけなので、いろいろ考えると投資にも慎重にならざるを得ません。その間にもNYダウは動いてしまうのです。そして、休み中、日本株は売買できないのです。ゴールデンウィークに遊びに行くのにも、株が下がったとなると気分が悪いので、やはり皆その手前で売るのではないかと思われます。様々なリスクを考えると、4月末に向けて売られやすい局面になると言えるのです。
 ではその場合、どこで売るのかと考えると、1つには3月末の権利確定日が挙げられます。そのタイミングまでは日経平均は全体として値を保つと思います。
 なぜなら、東証1部だと2.14%、日経平均だと1.96%の配当利回りがあるので、これは取りたいと思うのです。株主優待も結構な銘柄数あるので、これも取りたいという人が個人投資家の中にも多いと思います。そこまでは何とか株価は持つのではないでしょうか。ただそこから4月前半にかけてはぐだぐだと下がると予想します。4月末には売られるということがわかっているので、なかなか買いづらいということになります。そのように下がっていくわけですが、逆に言えば、4月末にかけて下がった後、5月の連休後には上がる可能性もあると考えられるので、少し戻してゴールデンウィーク、10連休に突入という流れになると思います。
 スケジュールの面から言うと、もう一つ大きな問題があるのが決算発表です。日本の場合、7割程度が3月期決算ですが、その決算期、3月末が終了してから、45日以内に決算発表しなければならないというルールがあります。3月末から45日後となるのが5月15日です。決算発表がスタートするのは毎年、4月23日ごろで、おそらく日本電産が最初に発表することになります。そこから多くの企業の決算発表が始まります。例年はゴールデンウィーク中でも数日は取引日があるので、そういう日にも決算発表をしていました。
 しかし、今回はそれがありません。しかもゴールデンウィークが10連休ということで、普通に考えるとその手前に前倒ししてくる可能性が高いと思います。それにより決算発表も集中してしまうので、ただでさえ発表する日が少ないところへ集中し、一日に何百銘柄も出てくることになるわけです。決算内容への判断がなかなかつきづらく、それによって株価が乱高下するということも考えると、4月末、決算発表が始まるところで株は持っておきたくないという心境も出てくるでしょう。
 今後の展開としては、一旦は3月頭に買われると思います。2月いっぱいはNYダウも日経平均もずっと上がり続けたので、リスクが低くなっているからです。通常大きな値動きがあるとボラティリティーが高くなって、そのことで株は売られます。大きな資金を運用する人は、債券にするのか、株にするのか、為替に投資するのかいろいろな選択肢の中で、できるだけリスクを抑えた運用をします。そうすると下がったものは売らなければならず、大きな変動があるものも売らなくてはなりません。しかし、ゆっくりと上がっているものについては、リスクが落ちているということになり、そこに対して投資を行うわけです。
 したがって、3月頭にはいわゆるマルチアセット型のファンドと言われている、非常に大きな資金を運用しているファンドの株式買いが入ってくる可能性があります。
 そのように3月の始めは高くなり、半ばはやや下がって、また権利確定に向けて高くなると見ています。そしてその高値はどのあたりまでかと考えると、私は2万2000円台から2万3000円あたりまでが可能性としてあり得ると思います。2万3000円にワンタッチあってもおかしくないでしょう。
 しかしそこからは休憩してくるという展開になってきます。4月は下げますが、4月末には少し戻したところで、ゴールデンウィークに入り、5月の10連休に何ごともなく、NYダウが上がっていれば、連休後最初の取引は窓を開けて上がる可能性すらあり得ます。あとはもちろん決算発表が重要です。基本的には、2020年3月期の会社予想値とアナリストの見立て、会社側の発表後、数日から1週間でアナリストが予想を出してくるのでそれを見て、海外投資家、機関投資家等は判断をして株を買うという形になるので、この動きが注目になると思います。
 一方、マザーズは、主要銘柄の下落で崩れた後、徐々に戻りを見せています。そして、もともとマザーズ指数には割安感がある状況です。週足の3年チャートで見ても安いところにあるのがわかります。まだまだ戻っていく動きが期待でき、4月末までに、去年12月の高値、1041ポイントや、その前の高値、1086ポイントをつけるような値動きになる可能性もあるのではないかと思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
財産ネット株式会社 企業調査部長
藤本 誠之
2月27日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【前回の記事】GEがバイオ医薬事業売却、何が起きているか(大前 研一)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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