グローバル・マネー・ジャーナル

2018.2.28(水)

日米金利差とドル/円相場をみる(唐鎌大輔)

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日米金利差とドル/円相場をみる(唐鎌大輔)
【金利差とドル/円】
 金利差とドル円という考え方がよく聞かれます。私はずっと円高に進むと考えてきたのですが、円安を見込んでいた人たちの見通しのほとんどは、この金利差のロジックに基づいています。
 アメリカが利上げをしそれによって、アメリカの金利が上昇する、そして日本とアメリカの金利差が開き、当然アメリカの方が金利が高いのでドル円は上昇し、円安ドル高になるという考え方です。円安を見る人々は必ずと言っていいほどこの考え方を主張し、非常に分かりやすいので流行るわけですが、本当にそうなのか、グラフで検証してみました。
 日米金利差について2年と5年と10年、各年について見たものになりますが、去年の秋から確かに拡大しています。ではそれを受けて円安になっているかというとそうではなく、為替はむしろ逆方向です。この考え方はまず、事実と異なっていることが分かります。
 そして何が一番まずいのかというと、この見方は金利が上がることのデメリットを全く考えていないということです。金利が上がれば住宅ローンを借りなくなり、設備投資も出なくなり、いわゆる耐久消費財というお金を借金して買うようなものの消費は衰えてくるはずです。その結果が株安であり、いつかは株安に反映されて返ってくるということを見ずに、円安見通しが流行っているのです。
 今、株が嫌気される原因が金利の上昇と言われています。金利の上昇があり株安となり、それを受けてドル円が上昇することはないというシナリオへの配慮が足らないのです。そのことが、世の中で流行っている円安見通しの欠点だと言えるでしょう。
 では、アメリカの金利を気にしなくて良いかというとそうではありません。あまり意味がないと思っているのは日米金利差で、アメリカの金利自体を見ることはとても大切です。要するに、日本の金利は極小で、ほとんど動かないわけです。したがって日米金利差といった場合それは結局アメリカ金利なのです。アメリカの金利はすごく大事なので、アメリカの金利マーケットで何が起きているのかを考える必要があるのです。
 この一年間、ずっとマーケットでテーマになってきたことがあります。為替や株と比べて金利はなかなか一般の生活から遠いところにあるので、あまり聞いた事はないかもしれませんが、それでも新聞紙面でよく見受けられたのが、イールドカーブがフラット化しているというテーマです。
 結局この一年でアメリカは3回利上げをしましたが、利上げをすればするほど、金利は全体的に上がっていくかと思いきや、この一年で起きた事は、2年金利や5年金利といったイールドカーブの手前のところは結構上昇したものの、その先については上がらず、やや下がったりもしたのです。それによってカーブがフラット化したのです。
 カーブがフラット化するというのは、教科書的には先行きが不安だというサインなのです。もしアメリカ経済がこれからどんどん加熱していき、どんどん良くなり物価も上がり、それに応じてFRBはたくさん利上げをしなければならなくなると思っていたとしたら、当然10年金利も上がらなくてはいけません。しかしそうはなりませんでした。10年金利と2年金利の差は、2014年をピークとしてどんどん下がってきています。
 つまり相対的に短い金利の方が上がるという局面が、3年以上続いているわけです。その中でドル相場も下がってきていて、二つのグラフは完全に一致しています。この一致が示すことは、つまりアメリカの経済の先行きが不安だからドルを手放しているというだけのことなのです。
 日米金利差という、二つを比べた形で議論をしようとすると、実際の相場との矛盾が生じます。一方、アメリカの金利マーケットで何が起きているのかを見た方が、為替との相関が掴みやすいのです。常にそうとは言いませんが、今はそのような状況が続いているということがポイントです。
 では、この先アメリカの金利はどうなっていくのでしょうか。この一年、中立金利という言葉も新聞紙面でよく使われました。
 これはFOMCのメンバーが想定する、長期的な政策金利の見通しです。四半期に一度、各メンバーが見通しを出し、その中央値を結んだものがこのグラフです。中立というのは、アメリカ経済にとって、引き締めしすぎでもなければ緩和しすぎでもない水準の政策金利で、これを中立金利と呼んでいます。
 それはつまり目指している水準であり、そこに到達したらもう利上げは終点と言えます。アメリカ経済の実力にとってちょうど良いのが、12月分の最新データでは2.75%となっています。ちなみに14年の6月は3.75%だったので、大体この3年半で1%ポイント切り下がったわけです。
 このように利上げの終点が切り下がっているので、必要な利上げの回数はどんどん減っていると解釈できます。そもそもアメリカの利上げ路線は正しいのかと考える場合、先行きに必要な利上げの回数がどんどん減っていく中で引き締めを続けるということ自体に、本来なら違和感を持って見るべきではないかと思うのです。私はもともと弱気なのでこのデータはそういう意味に見えてしまいます。
 次に、マーケットで最も見られている四つの金利を見てみます。いわゆるFF金利、10年金利、2年金利、そして中立金利です。グラフを見ると、利上げが階段状に登ってきて、踊り場に来て利下げになり、そして利下げしたことで景気が良くなると、再び利上げをしていて踊り場が来て、また利下げが来るという局面が続き、そして今また利上げが始まっている状況です。
 このように、大体踊り場が必ずやってくるわけですが、踊り場が来たときに10年金利や2年金利がどうなっていたかに注目して見ると、金利は必ず踊り場で頂点を迎えているのです。もう利上げができないという状況になったときに、国債の金利もほぼピークアウトしているのです。大切なことは、今、利上げの終点の見通しである中立金利が出ていて、それが2.75%ということです。
 実際、10年金利は2.9%前後であり、すでに到達してしまっているのです。もちろんマーケットの話なので、2.75%がホールインワンで、そこでピタリと止まるという事はあり得ませんが、2.85、2.95%位までの行き過ぎはあっても、さらに中立金利から離れて金利が大幅に上昇するという事はないだろうというのが経験則から見えてきます。
 円安の見通しというのは、日米金利差が拡大することが前提となっていますが、金利はどうやら上がらないと言えそうです。どんなことも100%ではないので、可能性はあるかもしれませんが、まず、金利差が開いてもドル円は付いてこなかったという実績がこの3、4ヶ月にありました。なおかつ100歩譲ってドル円が付いてくるとしても、金利差自体は拡大しなさそうだということで、どうやっても円安見通しを正当化することが難しくなっていると言えます。
 当然、メンバーの想定する中立金利なので、気が変わるということもあり得ます。今は2.75%と言われていますが、それが3%、3.25%と上昇する可能性もあります。過去にも実際上向いたこともありましたが、非常に小幅に止まっていて、いきなりこれが大きく上がるかと言うと難しいと思います。
 さらに中立金利が小幅に上昇して3.25%となったとしても、今の10年金利は2.9%なので、それでも0.3%ポイント程度しか上がらないわけです。アメリカの金利がその程度上がっただけで、ドル円が115円、120円になるかと言うと、それも難しいだろうと思います。為替はいろいろな角度で見ないといけませんが、今は円安に行く材料を探すのが難しくなってきたと思っています。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
みずほ銀行 国際為替部 為替営業第一チーム チーフマーケット・エコノミスト
唐鎌 大輔
2月20日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。