グローバル・マネー・ジャーナル

2018.2.21(水)

米国発の連鎖安、これからの株式相場は?(藤本誠之)

2018.2.21(水)
米国発の連鎖安、これからの株式相場は?(藤本誠之)
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米国発の連鎖安、これからの株式相場は?(藤本誠之)
【世界同時株高 リスクオン】
 マーケットは、世界同時株高、リスクオンだったところから、その状態に疑問符が付いているところです。世界で最も大きな国アメリカでは、FRBの議長がイエレン氏からパウエル氏に変わったところですが、経済の状況は絶好調です。雇用統計など様々な景気資料を見ても、アメリカの景気は非常に良いということなので、今年の利上げは3回と言われていましたが、4回になるのではないかという憶測が話題になっています。
 一方、ヨーロッパは景気自体がやはり良く、金融緩和の縮小からそろそろ金利引き上げ、引き締めの方向へ移りつつあるという状況です。そして日本を見ると、結局、日銀黒田総裁は続投となりました。彼がまた金融政策を担っていくわけですが、これまでいろいろなことをやり続けているものの結果は出ていないということで、いつまでもこのようなことができるのか、今後が注目されています。
 ゼロ金利政策や、ETFを毎年6兆円買っていくなど、金融緩和をジャブジャブにやってしまっているので、出口戦略が何らかの形で出てくるかというところが、今のところの相場の背景にあると思います。
 さらに中長期で考えた場合、アメリカでは、中間選挙が気になるところです。中間選挙で本当にトランプ氏が負けてしまうと、レームダック化することになります。つまり、大統領と議会の多数派がねじれてしまうことにより、何も決まらなくなってしまうので、このことをレームダック化すると言います。そのような状況になるのかどうかが注目です。
 ただ、今のところトランプ大統領はよくやっていると思います。トランプ減税をやると言って、実際に法人税引き下げという話になってきており、他にも様々な政策を通して、結局アメリカはオバマ大統領の時よりも全体的に明るい状況になってきています。様々な失言などがありますし、多くの問題点を抱えているとは思いますが、それを含めて考えても、アメリカは調子が良いのです。
 全てがトランプ大統領のおかげとは思いませんが、最低限ブレーキをかけていないという気はします。アメリカに関しては確かに今回の株価の大きな調整がありましたが、それほどここから大きく完全に崩れ去るようなことにはならないと思います。たださすがにあれだけ下げてしまったので、今後リハビリは必要かと思います。後は日柄の調整をどのようにこなしていくかということになってきます。
 また、ヨーロッパについては、今年はいろいろな選挙を抱えているというところが注目です。しかも欧州は1つの国ではないので、EUという組織の中に加盟国がたくさんあり、加盟国自体がバラバラに選挙をやっているという形です。イギリスのブレグジットの問題などもあるほか、ドイツにしても大連立がうまくいくのか、グダグダとしてきちんと決まっていないのにこのまま成り立つのか、海外から見ていると不思議な感じがしてしまいます。
 そうした中での各国の選挙ということで、やはり少しリスクがあると思います。ただ景気自体は悪くないので、それほどひどいことになるのか、ギリシャショックのようなことがあるのか、というとそれはないだろうと思われます。
 そして日本においては、結局日銀黒田総裁が続投しましたが、確かにいつまでもこんなことはやれないだろうというのが現状で、さらに日本の景気も実際に良くなっていると思います。統計でも景況感はかなり改善していますし、労働に関しても賃金の上昇も十分で、さすがに今回の春闘では数字が出てくるかと思われます。
 そろそろこの辺で何かやらないと、次に悪くなったときにさらなる対策ができないので、一旦緩和ペースを緩めるとした場合、どのようにうまくマーケットに織り込ませていくかがポイントです。国債の買い入れや、株式市場に大きな影響のあるETFの買い入れ、これを今6兆円という額を毎年買っていくという形ですが、5兆円にするなどが考えられます。いきなり辞めるというのはさすがにショックが大きいと思います。
 ただこのまま買い続けて、日本の大企業の大株主に日本の国がなってしまうというのは、社会主義ではないわけですから、これほど国有する必要があるのかというところが問題だと思います。日経平均の水準も2万円を超えたところで、安いところから比べれば安定しているともいえます。そうした中、何か動きがあるのかと考えられているのです。そのことが為替の動きにも反映されています。
 本来、アメリカの金利が引き上がっている、長期金利が上がっている状態であれば、日米金利差の拡大から、やはりドル高円安という流れだと思いますが、今、逆に円高方向に振れているというのは、黒田総裁続投も一つのきっかけだったかと思われます。黒田総裁の場合、今までガンガン緩和をしてきたので、この後出口戦略に向かうのか、それとも黒田総裁以外の人が入って、もっと緩和を進めるのかというところですが、ただこれ以上はやれない、やるべきではないと思います。この政策が今後どうなるのかが大きな問題だと思います。日本に関しては大きな選挙はなく、自民党総裁選があるとは思いますが安倍首相以外がなることは考えづらい状況です。
 このように見ると、世界各国、今年はいろいろなものを抱えながらも、景気、景況感は悪くないのではないかと思います。一番全体を引っ張っている欧州、米国に加え、日本も景気自体は決して悪くありません。企業業績も非常に絶好調です。中国など新興諸国も絶好調とは言えませんが、すごく不安かと言われるとそうでもない状況です。2018年、景況感が良い状態で株価が暴落していくという事は考えにくいと思います。
【VIX指数】
 今回の急落で注目されたVIX指数とは、ボラティリティ・インデックスの略称で、シカゴオプション取引所がアメリカS&P500を対象としたオプション取引の値動きから算出する指数です。オプションが大きく動けば、このVIX指数も上がり、値動きが荒いとうことで投資家の恐怖心理を示すとされています。この指数が今まで歴史的な低局面となっていました。異常に低い状態が続いていたのです。
 何故かと言うと、米国株がずっと安定的に、大きな暴落もなく狭い値幅で上がり続けていたからです。値動きがなくボラティリティーが低いため、VIX指数はどんどんと小さくなっていったわけです。その米国株が急落しました。アメリカの雇用統計が良く、長期金利が上がったことで株が下がったわけですが、株が下がったことによって変動率が高まり、VIX指数は大きく上がりました。
 そして実は今までVIX指数を売るという取引をしていた人たちがいたのです。この投資家たちが今回、大きな損失を抱えてしまいました。日本にもこのVIX指数を空売りする商品が上場していて、この2年ほどで、1500円から4万円まで価格が上がっていました。それほどVIX指数は下がっていたので、さらに下がる方向にかけている空売りでは、非常に儲かっていたのです。そしてその時価総額が300億円以上もあったのです。
 それがこの急落で10億円まで落ちてしまいました。4万円の高値から下がり、一時2万9444円という価格でしたが、それが大きな損失を抱えることになるので早期償還となり、その値段はなんと1144円と、あっという間に下がってしまったのです。90%以上が吹っ飛んだというこのような商品が、日本でも出ていたわけなのです。日本だけでもその時価総額が300億円あったという事は、海外では数千億から兆円単位のこのような投資があったはずです。海外でそれだけ売れているので日本も後追いで作ったと考えられるからです。
 日本でもそこまで知って買っている投資家は少ないはずですが、これまでずっと上がってきていたので買った投資家が多くいたのでしょう。それがこれだけの下落ということで、その分大きな影響が出ます。売っていた人たちは買い戻すのでVIX指数はもっと上がり、さらに株価が変動するという形で、まさに負のスパイラルとなりました。
 またこれだけアメリカ株が上がっていくと、株の比率を高めようとする動きが働きます。株や債券など様々な運用をする中で、本来激しく動くものは全体のポートフォリオの中で大きな組み入れができないのですが、株が丁寧にコツコツと安定的に上っていくと、組み入れることができてしまうのです。そしてそれが急に大きく動いてしまったので、やはりリスクの高さが明らかになり、その組み入れ比率自体も落とすことになり、さらなる下げにつながったというわけです。
 今回は、アメリカの景気が悪いから株が下がっているわけでは全くなく、どちらかと言うとこうしたテクニカル的な、財布の事情があったというのが下げの最大要因だと思います。ただこれだけ下がってしまったので、そのリハビリはしばらく続き、このまますんなり戻ってまた新高値を追うほど強くはないと思います。しばらくはレンジ相場が続くことになるでしょう。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
財産ネット株式会社 企業調査部長
藤本 誠之
2月15日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】日米金利差とドル/円相場をみる(唐鎌大輔)
【前回の記事】ブラックマンデー再来? 株式市場急降下(大前研一)
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。