グローバル・マネー・ジャーナル

2018.9.12(水)

米経済が商品価格に与える影響(近藤雅世)

2018.09.12(水)
米経済が商品価格に与える影響(近藤雅世)
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米経済が商品価格に与える影響(近藤雅世)

NY金価格とドルの逆相関関係

 金価格はようやく下げ止まったかに見える。最近の金価格はドル高=金安の図式で語ることができる。
 FRBは2015年12月、2008年12月以来7年振りの利上げを行ったが、その後2018年6月までの間に7回利上げを行い、目標政策金利を引き上げてきた。 年内に更に2回の利上げが予想されている。
 先進国はいまだゼロ金利付近で利上げする余裕は無く、米国のみが利上げしているため、自然にドル高となっている。 といってもドル高は今年からであり、昨年はもっぱらドル安であった。
 金価格は今年6月の利上げまでは利上げが近づくと安くなり、利上げが成就すると高くなるという傾向を見せていたが、6月以降はその循環から逸れて一方的に金価格は安くなっている。 その背景には今年のドル高の基調がある。 最近でこそ新興国通貨の大幅な下落でドル高が喧伝されているが、昨年は一方的なドル安の新興国通貨高であった。
 ドル高は今年に入ってからトランプ大統領が中国に対して貿易戦争を仕掛け、これに対して市場は、輸出入金額の差で中国は米国にどうやっても勝てないと見なしたからである。 無論その背景には米国の好景気の継続とそれに伴う株高、及び定期的な利上げ基調があった。
 昨年初めからのNY金価格とドルインデックスの逆相関関係は、相関係数▲0.78である。 一方、今年初めから見ると、▲0.89と逆相関関係が強まっている。つまり、今年のNY金価格は、ドル高になると金安となるという関係にあった。
 金とドルについてファンドの動きを見ると、正に正反対の様相が見て取れる。 まずNY金に対するファンドの売り残は過去最大を記録している。
 売り残は8月21日21万6317枚まで膨らんだ。それが28日に6000枚弱買い戻され、9月4は少し売りが増えている。
 下の黄色い過去5年間のグラフを見ると売りがピークに達して少し買い戻された様子がわかる。 以前の通りであれば、売りはこれから買い戻されて空売りは解消されていくはずだ。 これだけを見ると、金価格は底を打ったのかもしれない。
 一方、ドルに対するファンドの建玉は4月24日以来19週間にわたって、ドルが買い増されてきた。 それが、9月4日に初めて売られた。9月26日に利上げが控えているのでまだ買われるかもしれないが、トランプ大統領の世界各国に対する強硬姿勢に経済界は少し恐れを抱き始めているかもしれない。
 ドル高により、新興諸国では深刻な通貨安に見舞われており、FRBも利上げは年内までは行うとしても、来年は利上げする理由が付かなくなり、2.5%程度で打ち止めになるかもしれない。 そうした気配が出てくると、買われていたドルは売却されるかもしれない。
 ドル安に転じれば、金価格を始めとする商品価格は反転上昇しやすくなるだろう。

原油は横ばい、穀物は注視か!?

 2016年2月に26ドル/バレルまで下落したWTI原油価格は、OPEC諸国とロシア、カザフスタン等の非OPEC諸国が協調減産を行ったため、昨年半ばから上昇し始め、70ドル前後まで上がってきた。既に米国石油企業は好調な決算を行い債務の返済を行っている。そのため、ここ数週間米国の原油生産量はほぼ横ばいとなっている。
 一つにはパイプラインの輸送能力の問題があり、原油を掘り出しても在庫になり価格が下がる可能性を恐れているためであるが、これ以上儲けなくても良いという感覚にあるのかもしれない。
 世界的には、ベネズエラの石油生産が瓦解しており、イランは経済封鎖が11月4日に迫っておりトランプ大統領はイランから買わないようにと世界に呼びかけ、インドと韓国が購入を断念、日本もイラン以外から購入することになるだろう。
 その一方で中国がイランからの購入を増やすと約束している。 世界の需給から見るとイランからの供給途絶はそれほど大きな問題とはならない。
 ただ、イランの穏健派ロウハニ大統領が、国内経済疲弊を受けて過激な政権に代わったり、あるいは、イラン革命評議会が先鋭化してテロや海上封鎖を行い、ホルムズ海峡の通行に支障が出たりすれば、原油市場に大きな影響が出る。 そうしたまさかの事態が生じない限り、原油価格は生産者にとっても消費者にとっても居心地の良い70ドル前後で推移するだろう。
 穀物の注目点は、中国が25%の関税を掛けた米国産大豆の輸入が、これまでは減少してきたが、今後買わずにいられるかどうかということである。将来的には中国国内での大豆生産を大号 令の下で行い、米国産大豆の6割を購入している中国が買わなくなれば、困るのはトランプ大統領の選挙民である米国中西部の農家であろう。
 ただ、今年はブラジルとアルゼンチンしか米国産を代替できる国は無く、そのアルゼンチンは国内の圧砕需要が急増して輸入を始めているところ、1月に大干ばつに遭い生産減となっている。
 中国の消費者物価は上昇しており、ことにサラダオイル用の大豆油と、大豆粕を飼料とする豚肉の価格が上がると政治問題にも発展しかねない。 習近平国家主席にとっては、米中貿易戦争で、米国産大豆は、攻める手段であると共に大きなリスク伴っている。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
株式会社コモディティーインテリジェンス 代表取締役社長
近藤 雅世
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トルコ問題と米選挙の関連性(藤本誠之)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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